全国の町工場に足を運び、製造を依頼した。当初はテープで留めただけの簡易な作りだったボードの接続部は、スピーカー開発で培った磁石の知識を活用してマグネットによる着脱に改良し、「スナップバインディング」として特許を出願した。

 プロダクトとしてのイメージも固まり、製造できる工場は見つかった。しかしここで問題が発生した。工場から「ロット数が見込めないままでは、量産できない」と言われてしまったのだ。当時のバタフライボードは、資金や信頼の乏しい個人が作ったオリジナル製品。販売数の予測が難しい中で量産するのは、工場にとっても大きなリスクになるからだ。

 この問題を解決したのが、クラウドファンディングだ。開発資金を集める手段としての印象が強いクラウドファンディングだが、開発前にその商品に程度の需要があるのかを確認することができるのも大きな利点。福島氏がMakuakeでプロジェクトを発表したところ、約800人から計300万円近い支援が集まり、2015年7月に初めての量産化を開始した。

 その後も、ユーザーからのフィードバックをもとにオリジナルマーカーの開発などの改良を重ね、2017年8月には「バタフライボード2」のクラウドファンディングで1400万円以上の支援金を集めた。

 これにより、これまで資金面での不安や家族の安心を原因に踏み切れなかったバタフライボードへの一本化をついに決意。本業を辞職し、株式会社バタフライボードを設立した。実数は公開していないが、初年の売上高は副業時代の約4倍。2期目の収益も前年比10%増と好調だ。

生産から販売までを1人で担当

 みずほ総合研究所の調査(2018年)によれば、副業を行なっている就業者数は約270万人で、これは就業者数全体に占める割合は約4%だという。もちろんこの中には福島氏のような“闇副業”従事者の数は含まれていないが、リクルートキャリアの調査(2018年)では国内企業の71.2%が兼業・副業を禁止しており、これまでは副業を視野に入れてこなかったサラリーマンも多いはずだ。

 しかし、近年は副業に対する風向きが変わりつつある。昨今は定年まで面倒を見てくれる会社が減り、「人生100年時代」を安心して過ごすための収入源確保が必要だ。政府は2018年を「副業元年」と位置づけ、これまで副業の禁止を規定していた厚生労働省の「モデル就業規則」を、「勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」と改定し、副業を容認した。前述のみずほ総合研究所の調査では、収入補てんや新たなスキル・人脈獲得等の目的から副業を希望する就業者数は約2200万人だと推測されている。