キャリアアップや転職ではなく、副業による収入増加という選択肢を検討している人も、すでに少なくないだろう。とはいえ、フルタイムで本業に従事すれば時間や体力のほとんどを使ってしまい、副業に割けるリソースは決して多くない。限られたリソースの中で副業を成長させるには、どうすればいいのか。
まず福島氏が挙げた工夫が、「オートメーション化」だ。会社を立ち上げて2年経った現在でも、バタフライボードの社員は福島氏のみ。経理の一部は福島氏の妻が担当しているものの、商品の開発や修正はもちろん、外部サイトでの販売管理や発送まで全て独力でこなしている。
クラウド会計サービスなどを使いこなし、事務作業を極力デジタル化。また、商品の販売にはAmazon.co.jpやアスクルなどを選んだ。一度ストアに商品を登録すれば、商品の発送などの作業をほとんどやってくれるからだ。
ユーザーの声を取り入れて品質向上
自動化を進める一方で、ユーザーからの問い合わせについては、必ず自分で全て引き受けるようにしているという。前述の通り、バタフライボードではユーザーの声を取り入れて、繰り返しクオリティを高めてきた。
「もちろん努力はしますが、個人で製造する製品なので初めから完璧なクオリティに仕上げることは難しい。だからこそ、こまめにユーザーの声を聞いて修正を繰り返すことで、ここまで支持される製品にできたのだと思います。事務作業など効率化できる部分で無駄を省き、プロダクトのクオリティに直結する部分で手を抜かないようにしています」
また、副業に注力するために必要な要素として福島は「そもそも好きな仕事であることが大切」と言う。彼の場合、「自分の頭で考えたプロダクトを、実際に手を動かしてつくりあげる」という行為がそれだ。
「どんなに本業で疲れていても、帰宅後に自分のために手を動かす時間は楽しくて仕方がありませんでした。リソースに限りがある副業では効率化のための工夫が大切な一方で、どんなに疲れていても時間を惜しまず没頭できることを事業にすることが大切です」
副業の経験は、本業の糧にもなる
工夫を凝らして好きな仕事に取り組んできたといっても、やはり副業を進めるのは決して楽ではなかったと福島氏。バタフライボードを本業にしたのは副業を始めてから約4年後だが、家族からの理解や資金面での不安がネックとなり、本業化に踏み切れなかった時期も長かったという。
「それでも、トータルで考えれば副業は確実にプラスの経験です」と福島氏は断言する。その大きな理由は、企画から開発、製造元とのやり取りや販売まで、物作りに関わる全ての段階を経験したことで、本業にも影響したことだ。ほかの部門の人々の考えていることもわかるようになり、自分の仕事を商流全体から俯瞰できるようになったという。