「基本的に、先輩から研究を引き継いでいくスタイルなので、限られたものしかできないんです。共同研究に行くとしても先生のツテしかなくて、とても狭い世界。私はAIEに進学して、新たにAIの分野を研究しています。5年制のため、修士1年で結果だけにとらわれず伸び伸びと研究できるのもうれしいです」(馬場氏)

 AIEに進学後、ゼロベースから新たな分野を学べるように、基礎的な内容を補う講義があるという。「新しい興味と積み重ねてきた研究を交互にできるので楽しい」と馬場氏は笑う。

 現在、AIEでは2020年度の募集が始まっており、前期後期合わせて30人程度を想定している。AIEセンター長の金子氏は「継続して学生に興味をもってもらえるように常に改善し続けたい」と語る。

産学連携を成功へ導く「架け橋人材」育成に

 産学連携は、なかなかうまくいかないのが定説だ。その原因の多くは、企業のビジネス的視点と大学のアカデミックな視点がかみ合わないことにある。

 しかし、卓越大学院のカリキュラムがうまく機能すれば、ビジネスの視点を持ちつつ、深く広く新技術を理解する人材を創出することができるかもしれない。

 これまで経済面とキャリア面での不安により学びたくても学べなかった研究者たちが、伸び伸びした環境で新しい道を進める卓越大学院プログラム。教育構造を改革するこの新たな挑戦が、教育とビジネスの分断を終わらせ、新たなイノベーションを生む日は来るのか。