「体験重視化」「個別化」「時間軸の変化」
3つのキーワードから見える顧客の価値観
リクルートは12月、「新しい営業職」に関する求人と転職の動向についてまとめた。それによれば、「新しい営業職」の求人が2019年度比で2.62倍に増加したという。
多様化する営業の役割を再定義することによって新たな求人が生まれている。カスタマーサクセスは19年度比で3.58倍、インサイドセールスは1.71倍に増加。「新しい営業職」増加の背景にあるのは、カスタマートランスフォーメーション(顧客の価値観変化)だ。
「新しい営業職」については、以下のような特徴がある。
求人増加の時期や細かな背景は、それぞれ異なる。
まず19年頃、「インサイドセールス」の求人が急激に増加した。同時期にSaaS(Software as a Service)系サービスを中心とするサブスクリプション型サービスが増え始めた。それが、製品やサービスの導入提案を行うインサイドセールスの求人増加につながった。
同時期に求人が出始めた「フィールドセールス」は、21年頃から求人が徐々に増加した。インサイドセールスなどの取り組みにより、商談機会が増加し、交渉や契約のクロージングを専任で行うフィールドセールスの求人増加につながったからだ。
そして21年頃、急激に増加したのが「カスタマーサクセス」だ。19年頃から増え始めたSaaS系サービスを中心とするサブスクリプション型サービスの利用継続率維持、追加提案のための顧客フォローニーズが高まり、受注後のサポートを担うカスタマーサクセスの求人増加につながったという背景がある。
リクルートHR統括編集長の藤井薫氏によれば、「新しい営業職」の求人が増えている謎を解く3つのキーワードとは、「体験重視化」「個別化」「時間軸の変化」だという。
顧客の価値観が変化したことに対応するため、営業などの顧客接点部門のアプローチ方法にも変化が生じている。
顧客は、商品やサービスによって提供される体験や付加価値を求め(体験重視化)、画一的なものではなく、自分/自社に合ったものを選ぶことで満足感を求める(個別化)ように変化してきている。また、サブスクリプション型のサービスが増えたことで、サービス導入後の持続的な価値提供の重要性が高まってきており(時間軸の変化)、営業職に求められる役割も多様化してきたという背景がある。