未経験者が越境転職も
「異業種×異職種」が約2倍に
営業職の転職者推移を見ても、「新しい営業職」への転職者が増加傾向にあることが分かる。19年度を1とすると、22年度の転職者数は3.29倍となっており、営業職全体の転職者数(1.36倍)と比較すると大きく伸長している。
従来の営業職と比べると、求められる素養の多様化も進んでいる。エンジニアや施工管理などの技術系職種出身者や、飲食業や宿泊業などのサービス職種出身者など、異職種出身の未経験者が「新しい営業職」に越境転職するケースも生まれている。
そのため、18年度時点では17.6%だった「異業種×異職種」からの転職割合は22年度に33.8%(プラス16.2ポイント)まで増加した。例えば、以下のような事例がある。
■店舗などでの接客・販売経験を持つ人がインサイドセールスへ転職
来店した顧客に対して商品やサービスを分かりやすく説明するなど、初対面の人との折衝経験がインサイドセールスとの親和性がある。
■エンジニア経験を持つ人がカスタマーサクセスへ転職
近年増加しているSaaS系サービスは、インターネットを介してサービスが提供される。そのため、顧客フォロー時にITの知識が生かされる場面が多い。
■人事・経理・施工管理など専門職の経験を持つ人がカスタマーサクセスへ転職
業界や分野に特化し、顧客フォローを実施するため、専門的な知見が生かされる場面が多く活躍可能性が高い。例えば人事系のサービスであれば人事経験者、会計系のサービスであれば経理経験者、建設業界向けのサービスであれば施工管理経験者など、専門的な知見を生かせる。
共通して求められるのは、顧客の状況やニーズに合わせて、個別化された体験を提供できるスキルセットだ。各社がDXを進める中で、人を介した顧客アプローチを担う営業のニーズが高まっていることは非常に興味深い動きとなっている。
「企業側もこれまでとは違った多様な個性を受け入れることによって、顧客のさまざまな変化に対応する営業組織にアップデートし続けることが求められるのではないだろうか」と、藤井氏は指摘する。
顧客の価値観変化から始まった営業職の変化は、個人にとっても活躍する機会が広がるきっかけとなりつつあり、営業未経験者にとってもチャンスが広がっているといえるだろう。