濃い = おいしいコーヒーではない
適正な抽出濃度がポイント
薄い、濃いは、コーヒーに求めるものではないと小坂田さんは強調する。
「米を炊く時に、米1合につき1.2から1.3倍の水が適量だとされているように、コーヒーには、定められた抽出濃度があると思っていただいいた方がいいと思います。豆1に対し、15から17倍の水の量が適正値です」
もちろん、自分が好きな濃さにして飲むのは問題ないのだが、覚えておくと、コーヒー豆の味をより忠実に表現することができる。
「最近はコーヒー農家も世代交代が進み、個性を出そうと意識するようになってきています。焙煎機を購入して自分たちならではの味を追求したり、発酵の時間や温度を細かく変えて狙った味を出そうと試みたり。だから、彼らの意図をロースター(焙煎者)やバリスタもつないでいきたいのです」
コーヒーを淹れる前に、押さえておきたい三つのことがある。一つ目は、どんな豆を選ぶか。前述したような、焙煎にまでこだわっているショップを一つ見つけておくと安心だ。また、産地の個性を知っておくと、楽しみが広がる。
「まずはやはり、コーヒー発祥の地エチオピアのものでしょうか。エチオピアにはレモネードのような、レモンティーのような風味があります。隣のケニアだと、ドライトマトのような香りが特徴です」
そのほか、ブラジルやコロンビア、グアテマラなど中南米の産地は、ナッツやチョコレートのような風味を持っている。
トラディショナルなコーヒー豆であれば産地による味の違いが顕著だが、ワインのニューワールドのように、自由な発想で産地の特性を超えた個性を出そうとする生産者も増えているという。産地特有の風味だけでなく、個々の生産者の思いを味わうところに、コーヒーの新しい醍醐味がある。
二つめは、挽き方。自宅のミルを使用する場合には、大きさをできるだけ均一にすることを心がけよう。
「大きさが整っていないと味が安定しないので、一度挽いてみてバラバラであれば、もう一度挽くのがおすすめです」
粒が大きすぎると味が出ないし、細かすぎると味が出過ぎてしまう。なお、小坂田さんの店では、中挽きを基本としている。
三つめは、保存方法。冷蔵庫に保管することを良しとする向きもあるが、サウナのような高温多湿でない限り常温で問題ないと小坂田さんは言う。「冷蔵庫に入れると、他の食品の匂いがついてしまうことがあります」