飲み手の声を生産者に届けたい

 最近しばしば耳にするようになった「スペシャルティーコーヒー」とは、香りや味わいの質など、スペシャルティーコーヒー協会(SCA)が定めた審査項目で80点以上を獲得した豆のことを指す。SC Aは品質だけにとどまらず、トレーサビリティーやコーヒー農家が健全に継続していく仕組みを含めコーヒーの世界基準を高める活動を行っているため、SDGsの高まりとともに、注目を集めるようになった。

「その豆を使えば大丈夫と思っている方がいらっしゃるのですが、焙煎と抽出で良さを持続させないと、スペシャルティコーヒーは名乗れないんです」と小坂田さんは指摘する。

 ローシュガーローストでは、栽培から始まり、収穫や発酵・精製の仕方、輸送環境まで把握した上で、生豆を仕入れる。焙煎は投入量と時間、温度を徹底的に管理して実施する。

「カッピング(テイスティング)」で味を確認し、量を減らしたり、追加で火を入れたりと、0.1℃・1秒単位でシビアに調整を行います」

一癖バリスタが実践するコーヒーの淹れ方、朝の1杯が見違える!タッピングの様子  写真提供:ローシュガーロースト

 自宅でもスペシャルティーコーヒーを飲みたいなら、仕入れから焙煎にまでこだわっているコーヒーショップを探すことから始めた方が良さそうだ。

「スペシャルティコーヒーを表すFrom Sees to Cupという言葉があります。種からさかのぼって、カップからも生産者に戻したい。お客様のおいしいという言葉が自分たちの喜びであるように、彼らにも声を届けたいのです」

 コーヒーを一つの物語としてつないでいくことが、小坂田さんの目標だ。ローシュガーローストでは、コーヒーを提供する際に、産地や味を記したカードを添える。カードには生産者のSNSアカウントも明示されている。

 小坂田さんが淹れた5種類のコーヒーを飲み比べした。「キンモクセイやプラムのアロマ」「ピーチのような後味」「発酵過程でワイン酵母を投入している」などと聞きながら口に含むと、それぞれの個性が際立っていることに気づいてワクワクする。そして、心地よい酸味に驚く。

 どの産地の豆、どの焙煎具合を選ぶか。そして淹れ方次第で、コーヒーは変わる。作り手がコーヒーに込めた思いにまで触れてみると、休日の朝、コーヒーの香りに浸る時間が、もっと幸せになるかもしれない。