TポイントなのにTSUTAYAで使えない!?NECの大物幹部がコミットもシステム開発の誤算が招いた大失態Photo:JIJI

ビデオレンタルチェーンを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の共通ポイント構想にとって越えなければならなかった壁が、基盤となるシステムの開発である。実は、システム開発で誤算が生じ、当初はTポイントなのにTSUTAYAで使えないという失態を引き起こした。長期連載『共通ポイント20年戦争』の#8では、Tポイントのシステム開発の舞台裏を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

共通ポイントの壁はシステム開発
NEC担当者は「いい加減にして」

 ビデオレンタルのTSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の共通ポイント構想は大きく前進した。最大の難関ともいえる加盟店開拓で、新日本石油(現ENEOSホールディングス)とローソンの参画を取り付けることに成功したからだ。

 とはいえ、越えなければならない壁はまだあった。それがシステムである。ローソンや新日石といった加盟店で同じポイントを使えるようにする基幹システムに加え、POS(販売時点情報管理)システムを構築する必要があった。

 有力な加盟店を集めても、ポイントを共通で利用できる基盤がなければ、まさに「仏を造って魂を入れず」である。CCCは加盟店開拓の動きと並行して、システムの構築を急がなければならなかった。

 CCCは2002年11月14日の役員会で、共通ポイントのプロジェクトを進めることを決議した。その日のうちに、副社長でTポイントの「生みの親」である笠原和彦は動く。NECのDCMソリューション事業部長だった木下学にシステム構築を依頼したのだ。木下は後にNEC副社長に就任する。

 だが、木下は笠原が説明した共通ポイント構想に渋い反応を示した。時期を同じくして、NECはCCCのPOSシステムの改修プロジェクトを進めていた。システムに負荷がかかり過ぎて、店舗の会計に時間がかかるという問題を解消するためだ。

 NECはシステム改修に、多くの人員や時間を割いていた。そこに、新たに共通ポイントのシステム構築が降って湧いた格好となった。木下からすれば無理難題だった。「いい加減にしてくださいよ」。木下はNEC時代に1年先輩に当たる笠原にそう言い、ため息を漏らした。

 共通ポイントのスタートは03年秋を予定していた。時間がない中で笠原が頼ったのが、NECの“大物幹部”である。