結婚式を質素に抑える「ジミ婚」がブームになって久しい。とは言え、「ゼクシィ」の結婚トレンド調査2012 によると、挙式・披露宴にかかる費用の全国平均は343.8万円、ご祝儀総額は226.3万円となっており――経済的な事情から挙式を行わない「ナシ婚」カップルも少なくないとは聞くが――デフレ下とは無縁ではないかと思えるほど、人生の一大イベントである結婚式の費用は下がっていないのが現実だ。

SNSやメールなどでつながっている友人から「ご祝儀」を集め、結婚式の費用に充てるサービス「Bouque.me(ブーケ)

 そんな状況を背景にユニークなサービスが登場した。この2月にリリースされた「Bouque.me(ブーケ)」は、SNSやメールでつながる友人から事前に「ご祝儀」を贈ってもらい、結婚式の費用に充当するサービスだ。

 婚約したカップルは、まずサイト上に専用ページを作成する。そこで「引き出物」のプランを何パターンか用意する。その上で、SNSやメールで友人にシェア。応援したい友人は、希望のプランを選んでご祝儀を贈る。カップルは、その資金で結婚式を挙げる。

 日本型のクラウドファンディングは、プロジェクトが提供する物品や権利を購入することで支援を行うスタイルが主流だが、このブーケも、結婚に特化した新種のクラウドファンディングと言えよう。

 使い方は2通り。「必ず結婚式を挙げるカップル」は、ご祝儀の最低金額を支援者一人当たり1000円に設定する。1000円以上の送金があれば決済され、ご祝儀総額の15~20%が手数料として引かれる。

 一方、「ご祝儀が集まらなければ結婚式を挙げない」という使い方も可能だ。その場合は、目標額として、“結婚式費用20万円”などと設定し、この金額が集まらなければ決済はされず、手数料も発生しない。

 募集中の事例を見てみると、新郎が自身のスキルを「引き出物」にしているケースが多い。ある起業家の場合は、「2000円で推薦本のリスト」「1万5000円でビジネスコンサルティング1時間分」というプランを掲載している。モノで返礼する従来型の引き出物ではなく、サービスや能力で返礼するというパターンは、今後、増えていきそうだ。

「もともと、ご祝儀は披露宴よりも前にお渡しすることが、礼儀でした。もし婚約を祝うのと同時にご祝儀も送金できたら。ご祝儀まわりの心配ごとや手間が減るのではないか。新郎新婦の結婚式準備、当日に関する要望、悩みをこのサービスで解決していきたいと考えています」と開発に当たった株式会社サムライインキュベートの榊原健太郎CEOは語る。

 このほかにも、活用することで結婚式をスマートにするウェブサービスが、続々と生まれている。「APPY COUPLE」は、結婚式専用のスマートフォンアプリを作成するサービス。挙式にまつわる様々な事項を一元管理してくれ、オンライン上で招待状を出すことも可能。現在は英語版のみだが、同様の日本語アプリが普及すれば、挙式費用を抑える強い味方になりそうだ。

 形式にこだわらず、自分らしい結婚式を挙げたい。そんなニーズに注目したのが「みんなのウェディングプランナー」だ。式場専属ではないフリーランスのプランナーを探せるマッチングサイトだ。幼稚園やファミレス、美術館など、ユニークな場所での実績も多い。得意分野と人柄でプランナーを選んでいくスタイルだ。

 冠婚葬祭は伝統に根ざす部分が大きいだけに、IT化が遅れている業界と言われている。結婚式もそうだが、費用が高額になりすぎてしまい、適齢期世代の経済的実情との隔たりも大きすぎる。こういったサービスを活用して、一時負担の少ない“賢い結婚”が可能になれば、結婚に踏み切る男女が増えるかもしれない。そういう意味で、この分野のさらなる開拓が待たれる。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R)