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2023年、数カ月おきに大幅な機能追加を繰り返してきたChatGPT。3月23日、OpenAIが有料版のChatGPT Plusユーザーに向けてプラグイン機能を発表したときに、筆者の知る限り、日本企業では最速の5月6日から「食べログ」プラグインを提供開始したのがカカクコムだった。その後も同社は、食べログ関連だけでも「食べログAIチャット(β)」やPR文生成AI「食べロボくん」、プログラマ向けの「GitHub Copilot」など、さまざまな形でGPTを使い倒している。今回は、食べログに関するシステムおよび生成AIプロジェクトの責任者であるカカクコム 執行役員 食べログシステム本部長 京和崇行氏に、カカクコムがどんな形でChatGPTに取り組んでいるのか取材した。(ITライター 柳谷智宣)

ChatGPT登場で大きな変化が起きる
背景に「Google検索激減」への危機感があった

カカクコム 執行役員 食べログシステム本部長 京和崇行氏カカクコム 執行役員 食べログシステム本部長 京和崇行氏

 レストランの検索・予約サービス&グルメレビューサイトとして日本でも最大手なのが、カカクコムの「食べログ」。2005年に開設され、現在の月間利用者数は9077万人、月間総PVは19億7868万PVと、多くの人が日常的に食べログを利用している*。

*2023年9月の数字

 以前から、カカクコム社内ではAIの研究開発が行われており、ユーザーへのレコメンデーションなどに活用してきた。例えば、日々ユーザーから投稿される膨大な数の写真も社内でチェックしているそうだが、その際、写っているのが料理か店の内観か外観なのか……という判別にも、AIを使っていたという。

 そんな中、2022年11月30日にChatGPTが一般向けにリリースされた。Twitter(現X)にいるエンジニア界隈ではすぐに大きな話題になり、京和氏も急いで使い始めた。同時に周辺情報もウオッチしていて、「これまでにない大きな変化が起きる」と言われていることに気が付いた。

 12月には危機感を募らせたGoogleが社内コードレッドを宣言した、とニュースになり、1~2年でGoogleのシェアが落ちるのではないか、という情報が出回ったのだ。

 約1年たった現在、Googleの検索数が大きく落ちたという話は聞かないし、Google自身も「Bard」や「Gemini」といったAIをリリースしており、Google崩壊といった事態は起きていない。しかし、当時の食べログにとってそれは無視できるニュースではなかった。

「食べログのユーザーさんが流入する経路は二つあります。一つ目が、食べログのアプリやウェブサイトから直接検索する方法。二つ目が、Googleで検索する方法です。Googleからの流入が減るということになると、食べログ事業にも影響が出る可能性があります。(Google検索をする代わりにChatGPTに直接質問する人が増えるので、Googleが)ChatGPTにリプレースされる、というのであれば、早いうちに対応する必要があります」(京和氏)

 そこで、ChatGPTをビジネスに生かした機能を作ろうという取り組みがスタートした。その後、ChatGPTプラグインが発表されたので、それならばといち早くプラグインの開発を優先させたという流れだ。

 当時のChatGPTは、2021年9月までの情報しか学習していないのでその後の情報を知らず、最新情報をWeb検索してきて生成する回答に生かすということもできなかった。しかしChatGPTのプラグインを使うと、サードパーティーのサービスなどに連携して、そのサービスが提供する最新の情報をChatGPTが利用できるようになる、というメリットがある。現在では世界中で約1000個のプラグインが公開されており、GPTを選ぶプルダウンメニューから「Plugins」を選択すると利用できる。

 生成AIは必ずしも正確な情報を回答するとは限らない。ハルシネーション(幻覚)と呼ばれる現象で、間違った情報をそれっぽい言い回しで出力することがあるのだ。特に、「東京でオススメのバーを教えて」などのようにリアルな飲食店について尋ねると、高確率でハルシネーションを起こす。