伊藤忠商事経営陣の“長老化”が止まらない。会長兼CEO(最高経営責任者)の岡藤正広氏が実権を握ってから13年9カ月――。岡藤氏からの信頼が厚い人材が、幹部ポストや主要子会社のトップを長期続投する傾向が強まっているのだ。次世代の経営者は育っているのか。行き場をなくした50代社員のモチベーションは維持できるのか。特集『戦時の商社』(全16回)の#2では、伊藤忠の独裁の弊害を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
副社長は定年の規定超え異例の続投
CxOの在任期間は三菱商事の3.8倍
近年、商社業界で躍進を果たしたのが伊藤忠商事だ。かつては業界で「万年4位」といわれていたが、2021年3月期に利益・株価・時価総額で三菱商事、三井物産、住友商事を超えて「3冠」を達成した。その後、資源価格高騰の追い風を受けた三菱商事などに抜き返されたものの、資源ビジネスよりボラティリティーの低い非資源ビジネスで安定した収益を上げられるようになっている。
躍進の立役者といえるのが10年に社長に就任した岡藤正広氏だ。18年に会長になってからも最高経営責任者(CEO)として采配を振る。
その実績から、株式市場では岡藤氏が経営トップにいることで株価が高くなる「岡藤プレミアム」なる言葉も定着しているほどだ。
しかし、岡藤氏が社長に就き実権を握ってから13年9カ月が過ぎ、長期政権の弊害も目立ち始めている。
次ページでは、伊藤忠の最高財務責任者(CFO)や最高管理責任者(CAO)、社内カンパニー長の在任期間を三菱商事と比較するとともに、主要子会社の社長が“塩漬け”になっている実態を明らかにする。
幹部の長老化は短期的には経営の安定につながるが、中長期的には人材が育たなくなる弊害を生む。岡藤氏の退任後に予想される経営の混乱や人事の枯渇に伊藤忠は耐えられるのか。