米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイが日本の五大商社の株を取得したことが判明した2020年8月から3年4カ月がたち、丸紅の株価が4.7倍に上昇している。株価上昇をけん引した業績好転の背後には、日本の企業では禁断となっているある種の情報共有と、柿木真澄社長が自らに課した経営の三つのタブーがあった。特集『戦時の商社』(全16回)の#3では、丸紅を一変させた経営改革に迫った。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)
バフェット氏が持つ日本株は商社だけ
バークシャー保有株内の比率は、5社合計で6番目
2020年8月、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイが、日本の五大商社の株を買っていることが判明した。23年6月までに複数回買い増し、5社平均で保有率が8.5%以上になった。
日本の上場企業でバークシャーが保有している株は商社だけだ。バークシャー保有株の時価総額に占める5商社の合計の比率は約4%で、6番目になる(23年3月末時点)。
注目すべきは、5商社の中で、丸紅だけがバークシャー保有後の3年4カ月で株価が4.7倍にも上昇(下図参照)していることだ。なぜか。
実は、バークシャーの商社株購入が始まるほぼ1年前に社長に就任した柿木真澄氏は、日本社会では受け入れられにくいある経営決断を下していたのだ。これが低収益事業を一掃し、高値つかみの大型投資を抑制。丸紅を、バフェット氏が好む「割安の投資でもキャッシュを創出できる事業」の集合体に変えたのである。
次ページで、丸紅を急成長させた柿木社長の決断である「禁断の情報共有」と「三つのタブー」の具体的な中身を明らかにする。