沢井製薬に行政処分初の「総括製造販売責任者の変更命令」、担当役員を人柱にした厚労省の焦りPhoto:PIXTA
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 伝家の宝刀を抜いたといったところか。厚生労働省は2023年12月22日、沢井製薬(本社・大阪府)に対して「総括製造販売責任者」(総責)の変更を命じる行政処分を下した。同社が九州工場(福岡県)で製造した胃潰瘍治療薬「テプレノンカプセル50㎎『サワイ』」で、不正な品質試験を行っていたとし、医薬品医療機器等法に違反すると判断した。総責の変更命令は、製薬企業では初の出来事で、厚労省の激怒ぶりがうかがえる。

 総責は製品の品質管理と製造販売後安全管理の総括的な責任者で、とくに医薬品では原則的に薬剤師であることが要件となる。製薬企業では主に役員クラスが総責の立場にある。厚労省の変更命令は、企業の自由な経済活動に介入してでも、改善を図らなければ膿を出しきれないと判断したことを示す。総責を任されている役員としては、それ以上の出世は望めないどころか、退職を迫られても仕方のない失態となる。

 同日、沢井製薬が本社を置く大阪府と、九州工場を管轄する福岡県も業務改善命令を発出したが、総責の変更命令を出したのは厚労省だった。同省の医薬局監視指導・麻薬対策課は「変更命令の権限は都道府県にもある。ただ、前例がなく初めてということで、今回は厚労省が命じた」と解説する。今後は同様の命令を出す都道府県も現れると見られ、業界内では「明日は我が身か。早めに交代したい」との声さえ漏れる。