「私だからできた」のでなく
環境が人の能力を引き出す
「ビリギャル」が出版されたのは、就職4年目の年末のこと。ブームとともに小林さんの元には講演やメディアへの出演依頼が殺到する。全国各地の中高生と触れ合い、子どもたちから「人生を変えられると思った」という感謝の声がたくさん届いた。
「みんなもできる」──自分だから発信できるメッセージを伝え続けることに使命感を感じた。ウエディングプランナーを辞め、2014年からは講演活動に注力した。そして、次第に「教育」に関わる仕事をしたいという思いに駆られるようになる。
「教育現場を経験してみたい」
ネットの「校長日誌」に関心を抱いて、発信者の札幌新陽高校・荒井優校長(2018年当時)にメッセンジャーでじかに頼んでみたところ、「インターン」として受け入れてもらえることになった。ここで、同校に「探究コース」を創設した中原健聡さん(現Teach For Japan代表理事)と出会ったことが、小林さんのその後を大きく左右する。
「子どもたちに必要な学習環境とは何なのか」
熱心に問い掛けてくる小林さんに中原さんが勧めたのは、聖心女子大学で「対話を通じて子ども自身が学びを深める教育」を研究する益川弘如教授への師事だった。2021年に同大学院を修了した後も「教育」という学問への関心はさらに広がっていく。
「私には、母や坪田先生という自分を認めてくれる大人がそばにいる環境がありました。周囲の大人の働き掛けが、子どもの潜在能力を引き出す。そのことを科学的に証明したいと思ったのです」