複雑化する現代の問題に
無理に正解を出そうとする必要はない
鈴木 若者でも年配者でも、「どうせ……」と思ってあきらめている人が多い。一生は一回しかないので、やっぱりその一回で、好きなことをやってほしいのです。私は、そのための応援をずっとしていきたいですね。
――鈴木さん一人でそうした人たちを育てるには、限界があるのではないでしょうか。例えば、スクールのようなものをつくり、教え子にさらにどんどん教えていってもらう、といった構想はありますか?
鈴木 「すずかんスクール」ですか? それは賛同者がいればぜひやってみたいですね。賛同者募集します(笑)。でも、すずかんゼミは、学生たちが相当、主体的に活動しています。ゼミ長は選挙で選ばれ、ゼミに入りたいという人は人事部長が面接をして、授業設計部長が授業内容をデザインする。私が「これをやろう」と提案するのではなく、学生たちが「これをやってくれ」と言ったことだけをやるよ、と。私が教えるというよりは、学生たちによる自治をとても重視していて、私はあまりゼミの中でえらくないんですよ(笑)。
――社会人向けにはこうしたゼミは実施していないのでしょうか。
鈴木 社会人向けにも、社会創発塾(※)というのを運営しています。
※一般社団法人社会創発塾。鈴木寛氏が塾長を務める
田原 日本人はね、結局、好きなことが見つけられないまま一生を終える人がけっこう多いんです。鈴木さんは、何で好きなことを見つけることができたのですか。
鈴木 やはり、高校生や大学生などの若いときに、いろいろなものにふれる機会があったからだと思うのです。これは大きいと思います。
――あらためて、これからの日本を担う、10代や20代の若い方々に、これからの時代、求められる能力とは何だと思いますか?
鈴木 私は、世界と日本のデータを比較する仕事が多いのですが、日本は環境が恵まれていることもあり、学生の能力というのは、じゅうぶん高いのです。ですので、ある意味、「能力」ではないんですね。
岐路に立たされたとき、未知の境遇に遭遇したとき、日本社会というのは、過剰にジタバタしてしまう、パニックに陥ってしまう、こうした傾向があるように思えます。それは若い人たちだけでなく、日本全体が、ですね。ですから、「何とかなるんだ」という気持ちをしっかりと持つ。想定外や板挟み、矛盾といったことに向き合える力を養うことですね。
田原 そして、話し合える人がいるかどうか。
鈴木 そうなんです。何か大変なことがあったときに、まさに相談できる、対話できる、熟議できる友人や同志、家族がいれば、問題を1人で抱え込む必要はなくなります。そもそも、解決しなくていいんですよ。向き合うだけでいいんです。答えなんてすぐに出ないのですから。
田原 解決なんかしなくていい。自分の悩みを話し合える相手がいれば、それでいい。そして、対話をする。問答をする。