
ポイント経済圏の覇権を巡る攻防が熾烈になっている。台風の目になっているのが、三井住友フィナンシャルグループ(FG)などが展開するVポイントだ。三井住友FGは5月、ソフトバンクと提携し、VポイントとPayPayポイントの相互交換に乗り出すと発表した。ポイント経済圏同士の巨大連合が誕生することになる。Vポイントは先行する楽天ポイントとNTTドコモのdポイントを猛追するが、足元では経済圏の基盤を弱体化させかねない二つの火種がくすぶっている。長期連載『共通ポイント20年戦争』の本稿では、Vポイントが抱える二つの火種について解説する。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)
VポイントがPayPayと相互交換へ
巨大連合で楽天とドコモを猛追も
「オリーブは想定以上にうまくいっている」。三井住友フィナンシャルグループ(FG)の中島達社長は7月のダイヤモンド編集部のインタビューにそう語っている(『三井住友FGの中島社長が明かす「リテールビジネス変革」の大構想、銀行と証券の垣根がなくなる!?』参照)。
オリーブとは三井住友FGが2023年3月にサービスを開始した個人向け総合金融サービス「Olive(オリーブ)」のことだ。中島氏によると、アカウント数は今年3月末に500万口座を超え、7月時点で600万に達する勢いだった。2年半をたたずして、目標である「開始5年で1200万口座」の半数を確保できたもようだ。
中島氏が強調したのが、他の企業との大胆な連携だ。中島氏は「PayPayさんやSBI証券さんとの提携がどんどん出てきています。他にも『ぜひ一緒に組みたい』というお申し出が非常に多い」と打ち明けている。
中島氏が挙げたソフトバンクグループのPayPayとの提携は、ポイント経済圏を巡る合従連衡としては極めて大きな動きだ。三井住友FGは展開するVポイントとPayPayポイントとの相互交換に乗り出す。経済圏同士による巨大連合の誕生だ。
そもそも三井住友FGは22年10月、Tポイントを展開してきたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)との資本・業務提携を発表。24年4月から、Tポイントを自社のVポイントに統合させ、新生Vポイントを展開してきた。
VポイントはTポイントが持っていた15万の加盟店に加え、Visaカードが持つ世界1億店以上の加盟店で利用できることが強み。オリーブなどのサービスもひも付くVポイントは、まさに経済圏の支柱でもある。
ポイント経済圏の覇権争いでは、近年は楽天グループの楽天ポイントや、NTTドコモのdポイントが優勢だった。劣勢にあったTポイントを統合したVポイント陣営はPayPayという経済圏と組み、先行する2陣営の追い落としを狙う。
ところが、大胆な拡大策に打って出るVポイントの足下で、ポイント経済圏の基盤を弱体化させかねない二つの火種がくすぶっている。次ページで、二つの火種について明らかにする。