漫画家の堀田あきお、かよ夫婦が、自分たちの「老活」や「終活」を描いたコミックエッセイ『おふたりさま夫婦、老活はじめました。〜どうなる⁉︎ 私たちの老後〜』(ぶんか社)。2人の体験をもとに、老後について考える連載の第1回は、そもそも老活や終活とは何か、その違いや目的を解説する。そして、堀田夫婦が始めたきっかけは……?(ダイヤモンド・ライフ編集部編集委員 小野真枝)
安心して老後を過ごすために
今からできること
昨今、「老活」や「終活」という言葉をよく耳にするようになった。両者は似たような印象を受ける言葉だが、厳密には明確な違いがある。
「老活」とは、より良い老後を迎えるための準備のこと。妻・堀田かよの言葉を借りれば、「どうしたら少しでも安心して老後を過ごせるか」を考えて不安材料を減らし、充実した老後を迎えるための活動だ。趣味を充実させたり、健康増進に努めたり、資産を確保したり……。現役時代から準備しておきたいことはたくさんあるが、好きなことや幸せの定義、必要なお金が個人で違うことを考えると、人それぞれやることが異なるだろう。
一方「終活」は、その名の通り「人生を終えるための準備」。病気で体の自由が利かなくなったり、自分の意思で動けなくなったりした時のため(たとえピンピンコロリで死んでも)、死後、残された人に迷惑をかけないよう身辺整理をすることだ。
介護や医療に対する希望、遺産相続、葬儀やお墓の準備など、ある程度項目が決まっていて、手続きに関することも多い。これらをまとめて記録するのが「エンディングノート」で、さまざまな出版社や団体などから提供されている。
楽天インサイトが2023年1月に実施した「終活に関する調査」(全国の20~69歳の男女1000人が対象)によると、「終活の意向あり」(「実施している」「近いうちに始める予定」「予定はないが、時期が来たら始めたい」)と答えた人の合計は全体の71.8%だが、その中で実際に「実施している」と回答した人は全体で5.8%にとどまる。50代女性は9.9%、50代男性は2%未満、60代女性は14.8%、60代男性は6.2%で、男女別・年代別に見ても高くはないという結果が出ている。
「終活」を行動に移す人がまだ少数派の中、堀田あきお、かよ夫婦が、「老活」や「終活」に取り組むことにしたのは、親の介護がきっかけだ。2人は漫画家として締め切りに追われる毎日をやりくりして、群馬にあるかよの実家と東京の住まいを行き来しながら、長年にわたり、動けなくなったかよの母親を介護してきた。
そして気がつけば、中年から初老へと人生のステージが移り変わり「そろそろ自分たちの老後も考えなければ……」と焦ることに。
子どもがいない2人が気づいたのは「将来、誰が自分たちの世話をしてくれるんだ?」ということ。お互い元気なうちはいいが、「1人が動けなくなって、残されたほうもボロボロだったらどうなるの……?」「どっちかが死んだ後、残されたほうは孤独死するしかないの?」と、不安に駆られる。
内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、要介護者(介護される人)と同居している介護者(介護する人)の年齢は、男女共に60歳以上が70%以上に上り、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」が相当数いることを表している。堀田夫婦の心配は、すでに起こっている現実なのだ。
さらに、自由業の2人にとって、将来、年金がどれくらいもらえるのかも気になるところ。貯金が潤沢にあるわけでもなく、老人ホームに入るお金もままならない。まさに“お先真っ暗闇”……。
そんな“老人初心者”夫婦が一念発起して、体当たりで臨んだ老活・終活の日々。お金や健康のこと、そして、入棺体験も!読者の皆さんも、一緒に将来のことを考えてみてほしい。