「世界大学ランキング200位以内」
企業の採用基準を見直すべき

【偏見④】「世界ランキングが高い大学」の学生が優秀

 多くの企業が、とりあえずの線引きとして、採用大学の基準を「QS世界大学ランキングトップ200位以内」としている。このランキングは、イギリスの大学評価機関であるクアクアレリ・シモンズ(Quacquarelli Symonds)が毎年発表しており、大学の評価を示す指標として広く使用されている。

 最もランクイン数が多い国はアメリカだが、トップクラスのアイビーリーグ(ブラウン大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、イェール大学)やUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)などは学費が高いため、一般の家庭からの学生は、奨学金の受給なしにはなかなか進学できない。

「ボストンのある有名な大学に通う学生は、家賃が1カ月60万円かかると話していた」(石下氏)というほど、高額な経済的負担がのしかかる。その結果、学費を捻出できる一部の学生だけが、こうした大学に進学しているのが実態だ。こうした日本人学生の中には、適性テストを受けてみると、意外にも主体性や意思伝達力、チャレンジ思考が低い人もいる。

 一方で、経済的な理由から費用が捻出できない学生は、アメリカ中部やテキサスなど都会から少し離れたエリアや、学費が比較的安いアジア圏などに留学する。そうした学生は、厳しい環境でとてもタフな経験をしている。だから、一概に「世界ランキングが高い大学の出身者は優秀」とはいえないのだ。
 
 多くの企業が、採用の際に「英語ができてグローバルな経験があるから」というよりも、「優秀である確率が高いから」という理由で海外大学生を採用している。同時に、企業サイドは「経営幹部やハイパフォーマーとして育てたい」という思いも抱いているようだ。しかし、採用においてミスマッチが生じるのは、こうした企業サイドの偏見が一因のケースもある。

 海外大学生は、英語ができてグローバルな経験があるため、優秀だと一般的に考えられがちだが、何も語学力だけが評価基準ではない。

 彼らはアカデミックなレベルが高く、膨大なタスクを処理する能力とタフさを持っている。大学を卒業するまでのハードルが高いため、学業に真摯(しんし)に向き合う。睡眠時間を削りながら、多くの課題やプレゼンテーション、グループワークをこなしている。自分と向き合い、困難を克服してきた結果、リスク管理能力が高く、自立心の強い学生が多い。

 また、圧倒的なマイノリティー環境で自己形成を遂げており、留学中に不便な出来事を経験している。特に日本人留学生が少ないエリアでは、常に「外国人」として扱われ、日本では当たり前にできることができず、苦労することもよくあるのだ。それがかえって、グローバルな視点を身に付けるきっかけになる。

 実は、「一般的にこうした特徴はあまり知られていない。海外大学生は英語力といったスキルなどのハード面の要素だけで評価されてしまい、『内面やありのままの自分を見てもらったと実感できる就職活動ができなかった』と悩む学生も多い」(石下氏)ようだ。

 企業がこうした海外大学生を適切に評価し、本当に優秀な人材を獲得するためには、英語力以外の評価基準をはっきりと示し、ボストンキャリアフォーラム以外でも海外大学生との接点を持つ。アジア圏の学生にも積極的にアプローチするといった対応が求められる。

 海外大学生は優秀な人材の宝庫なのは間違いない。企業が偏見や誤解を排除し、積極的に採用活動することで、企業のグローバル化がより促進されることだろう。
 
 最後に次ページで、日本企業の人事担当者が狙い目の海外大学について、「iroots international」に登録している学生の所属大学からピックアップした。海外大学生を採用する際の参考にしてほしい。