“日本の半導体復活”の期待を背負って船出した半導体受託製造のRapidus(ラピダス)。その将来に厳しい見方がある中で、「強力な武器もある」と説く国際政治学者の鈴木一人・東京大学公共政策大学院教授。特集『半導体 投資列島』(全9回)の最終回では、国家安全保障政策と半導体など先端分野の技術動向にも精通する鈴木教授が、ラピダスの成功に必要な条件と、計画が凍結された国産旅客ジェット機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」の轍を踏みかねなくなる“リスク”の正体を語った。(聞き手/ダイヤモンド編集部 大堀達也)
過去の“国プロ”から学んだラピダス
「ラストチャンス」の本当の意味とは?
――日本初の半導体ファウンドリー(受託製造企業)として、Rapidus(ラピダス)が動きだしました。立ち上がりの印象は。
ラピダスは、これまでの半導体の国家プロジェクトやメーカーの経験から、ずいぶん学んでいるという印象です。
日本の半導体メーカーが衰退した理由の一つは、ファブレス(製造設備を持たないメーカー)とファウンドリーの“分業”が理解できていなかったことです。その点で、ラピダスはファウンドリーに特化してスタートしました。
また、これまで日本の半導体メーカーはそれぞれ、日立製作所や東芝、富士通といった巨大な電機メーカーの一部でしかなく、半導体に必要な巨額の投資を続けることは困難でした。
国家プロジェクトも、「オールジャパン」を目指したことが裏目に出て、どの企業もライバル会社の技術者が集まるところに“エース”人材を送ろうとはしませんでした。
一方で、ラピダスは、出資企業を見るとNECを除けば半導体を主要事業としている会社はありません。このため出資企業の思惑に振り回されることはないでしょう。
ラピダスは過去の教訓を生かし、半導体のグローバル市場で勝負ができるメーカーを目指していることがうかがえます。
――ラピダスは、半導体で世界から周回遅れの日本が追い付くための“最後のチャンス”といわれています。これをものにできるでしょうか。
鈴木教授が説く、ラピダスに託された最も重要な“ラストチャンス”の役割とは何か。次ページでは、ラピダスが「MRJ」の轍を踏みかねなくなる“リスク”の正体と同社成功の条件、そしてラピダスが持ち得る“世界と互角に戦うための武器”について語る。