半導体 投資列島#5Photo:Goodshoot/gettyimages

“最強の半導体立国”をつくるために必要な条件。それは「電子部品」産業に“厚み”があることだ。その点で日本は、世界でも数少ない“あらゆる電子部品・部材を製造している国”の一つであり、半導体復活の潜在力は十分ある。特集『半導体 投資列島』(全9回)の#5では、世界屈指の競争力を持ち中長期で強さを維持する、日本の電子部品企業を紹介する。(インフォーマインテリジェンス合同会社シニアコンサルティングディレクター 南川 明)

パソコンからロボットまで必須の“4製品”
すべてを製造できるのは世界で日本のみ

 半導体だけではスマートフォンやパソコンは動かない。半導体の性能をフルに発揮させ、最終製品として完成させるためには「電子部品」が欠かせない。

 半導体市場の活況を受けて、日本の電子部品にも注目が集まっている。日本政府が半導体に次いで電子部品の強化に乗り出したからだ。半導体の需要家である電子部品産業が発展すれば、半導体業界の成長にもつながる。

 経済産業省は2023年11月、経済安全保障の強化に向けて、データセンターや電気自動車などに使われる先端的な電子部品(積層セラミックコンデンサーなど)を「特定重要物資」に指定する方針を示した(下図参照)。国民生活に欠かせない電子部品の安定供給に、必要な支援を行う方向で調整している。

 政府が半導体に次いで電子部品の強化に乗り出したのは、家電製品や産業機械などあらゆるエレクトロニクス製品が半導体だけでは完成せず、電子部品も“必須のパーツ”になるからだ。

 エレクトロニクス製品を作るために必要不可欠なものが四つある。(1)演算をつかさどる「半導体」、(2)コンデンサーなどの「電子部品」、(3)駆動装置の「モーター」、(4)さまざまな機能を持った樹脂など「電子素材」の4製品である。

 4製品のうち一つでも欠けていると、パソコンやスマホを製造することはできない。今後成長が期待される「コネクテッドカー」などの次世代モビリティーや「ロボット」など産業機械にも、4製品は不可欠である。

 いま、世界を見渡すと、“4製品全て”を自国で製造する能力を持った国・地域は、日本をおいてほかにない。米国やドイツ、中国、台湾も四つ全てはそろっておらず、欠けている製品を他国から輸入してエレクトロニクス製品を製造している。この点において日本は非常に優位な立場にある。

 従来、パソコンや産業機械のメーカーは、4製品をバラバラに購入し、組み立ててエレクトロニクス製品を完成させていた。しかし、この方法では、購入した4製品が、必ずしも最終製品にとって“最適”な形にカスタマイズされていない。このため、最終製品の小型化や高速処理への対応、低消費電力の実現に限界があった。

 小型化や省エネルギーを実現するには、4製品の技術を“融合”することが重要になる。つまり、エレクトロニクス製品メーカーは、開発段階で4製品を手掛けるメーカーと協力することが必須になる。

 日本は、そうした共同開発が可能な“世界唯一の国”といえる。この優位なポジションを守っていくには、まず日本が競争力で勝る電子部品の重要技術の流出を防ぐ必要がある。

 今回の先端電子部品の特定重要物資指定は、日本がエレクトロニクス分野で“強国”を目指す第一歩といえる。最終的にエレクトロニクス産業が活気づくことで、それに必須となる半導体産業の成長も期待できるのだ。

次ページでは日本が競争力を持つ電子部品やモーターなどにおいて、独自の技術によって高い世界シェアを持ち、中長期で強みを維持する可能性が高い企業8社について、それぞれ強みとなるポイントと共に、今期と来期の予想増益率、予想PER(株価収益率)を、銘柄表にまとめて一挙紹介する。