米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長にとって、利下げのタイミングを決めるのは十分に困難な仕事だ。引き下げが早すぎればインフレが再燃しかねず、遅すぎれば失業率の上昇を招く恐れがある。今年は11月に米大統領選挙を控えており、「選挙の年」に絡んだ政治的な思惑が渦巻く中で判断を迫られるパウエル氏は、さらに大きな困難に直面している。大統領選で共和党の最有力候補であるドナルド・トランプ前大統領の支持者らは、FRBは利下げが近いとのシグナルを発することで、ジョー・バイデン大統領を手助けしようとしていると主張する。一方、民主党議員の間では、FRBが金利を長期にわたり高水準に維持することで、バイデン氏再選の見通しを危険にさらしているとの懸念がある。