営業人材育成の壁を突き破る
中小企業での新規開拓と業務分離の必要性
自社の標準営業プロセスを確立しようとする際、中小企業では一人の営業部員が担当する業務範囲の広さという壁に直面します。
中小企業の営業部員は、新規開拓のためのリスト作成から電話でのアポ取り、会社や製品の説明、お客さまニーズのヒアリング、提案、見積もり作成、クロージング、配送、アフターサービスに至るまであらゆる業務を一手に担います。
これらの幅広い業務を標準化しようと試みても、プロセス自体が広範かつ複雑で、それを習得する営業部員の負担も大きいのが現状です。
また、新規開拓も中小企業における別の課題として挙げられます。
多岐にわたる営業業務の中で、営業部員の最大の役割は受注であり、受注可能性の高い商談を優先しがちです。新規開拓から間もない案件は不確実性が高く、しばしば後回しにされます。この傾向が、中小企業で新規開拓が経営上の課題になる一因です。この観点からは、営業部員の仕事選択は正当とも言えます。
こうした状況を踏まえ、新規開拓を営業部員の業務から分離することを推奨します。営業活動を受注に特化させることで、業務範囲を限定できるようになります。そうすれば、標準営業プロセスの確立が容易になると同時に、営業部員の負担も軽減されます。新人の営業部員にとっても業務を覚える期間も短くなるでしょう。
営業部員の育成は、実践を通してのみ可能です。トップセールスの営業プロセスを採用し、それを繰り返すことで、お客さまに育てられていきます。お客さまが存在しない人材育成は成り立ちません。
マーケティングと営業を分業することで、営業部員の業務範囲を絞り込み、効率的に営業スキルを習得できるようになります。
最近では、マーケティングと営業の役割分担に加え、内勤営業(インサイドセールス)の役割を設ける企業も増えています。内勤営業の導入により、人材育成のためのキャリアパスを社内で構築しやすくなり、採用基準となる必要な経験やスキルも少なくなるため、幅広く人材を採用できるようになります。これらの詳細については、私の著書『売上10億円の壁を突き破る! 営業DXの強化書』で詳しく解説していますので、参考にしていただければ幸いです。
おわりに
営業活動を分業し、自社の標準営業プロセスを構築することは、社内の人材育成のための第一歩と言えます。標準営業プロセスを従業員が繰り返し実践することにより、仕事を学んでいきます。営業スキルは、顧客から得られるものです。