現代人は「慢性的で容赦ないストレス」に押しつぶされ、頭も肉体も、そしてメンタルも疲れ切っている。私たち人間が本来持つ「エネルギー」を取り戻すには、どうすればよいのだろうか? 本連載では、スタンフォード大学で人気講義を担当し、億万長者の投資家、シリコンバレーの起業家、アカデミー賞俳優のコンシェルジュドクターでもあるモリー・マルーフの著書『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から人生最高の時期を引き延ばし、生活の質を最大限に高め、幸福度を増し、慢性疾患の発症リスクを下げる「最新の健康法」を紹介する。
飽和脂肪を摂りすぎてはいけない
飽和脂肪は食に関する論争の的となっている。
不飽和脂肪のほうが飽和脂肪より健康に良いと主張する研究もあれば、真逆の主張をする研究もある。
その食い違いの原因は細かい部分にある。
飽和脂肪が一様に健康に悪いわけではないが、私たちはそれを摂りすぎているのだ。
狩猟採集民は、総摂取カロリーの10~15%程度を飽和脂肪から摂取していたとみられる。
フランスでは、飽和脂肪の平均摂取量は総摂取カロリーの15%未満だ。
大半の国の食事摂取ガイドラインは概ね、飽和脂肪の摂取量を総摂取カロリーの10%未満に抑えるよう推奨している。
一方、米国人は平均して総摂取カロリーの21%を飽和脂肪から摂取している。
私たちは飽和脂肪の摂取量を総摂取カロリーの10~15%にすることを目指すべきだ。
飽和脂肪自体が健康に害を及ぼすわけではおそらくないが、飽和脂肪は通常、精製炭水化物と一緒に摂取される。
この組み合わせが、炭水化物によるインスリンスパイク(インスリンの大量分泌)と脂質によるインスリン感受性低下を引き起こすことで、特に代謝の健康に悪影響を及ぼし、代謝性疾患の罹患リスクを高める。
飽和脂肪と炭水化物が大量に含まれているのが、アイスクリーム、ハンバーガー、キャンディー、ペストリー、ピザだ。これらが標準的な米国人の食事の大部分を構成し、非常に人気は高いが問題の多い食品であるのは言うまでもない。
精製炭水化物が私たちの食事に登場してから約200年しか経っていない。一方で、飽和脂肪は200万年ものあいだ人間の食事の一部であり続けている。
にもかかわらず、他の栄養素よりも飽和脂肪に対する感受性が高い人がいる。
飽和脂肪に対する感受性には個人差がある。健康に何の影響もなく好きなだけ飽和脂肪を摂取できる人もいれば、摂取によって血中脂肪値が危険なほど高くなる人もいる。
これは遺伝によるものと考えられる。実は私も遺伝的に飽和脂肪に対する感受性が高い。これを知ったのは、遺伝子検査をして、高コレステロール血症や心疾患、アルツハイマー型認知症のリスクを高めるアポリポ蛋白E4(ApoE4)と呼ばれる遺伝子変異体が1つあることがわかったからだ。この遺伝子は脂質代謝異常を示唆している。
(本記事は『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から一部を抜粋・改変したものです。)