モデル就業規則には法的拘束力はないものの、多くの企業はこのモデルを改変しながら自社の就業規則を作成している。詳細は不明だが、多くの企業では就業規則において副業を原則許可するようになったと考えられる。

 では、実際のデータはどうか。22年に行われた総務省の就業構造基本調査において、非農林業従事者のうち副業がある者の比率は4.8%と、17年の3.9%から大幅増となった。その前の調査では、07年が3.9%、12年が3.6%であるため、17年から22年にかけての副業従事者比率の増加は、前述の18年のガイドラインの策定とモデル就業規則の変更の結果であると考えてよいだろう。ひとまずモデル就業規則の改訂は所期の目的を達成したといえる。

 しかし、これで話は終わらない。政府が副業を促進した背景には、労働者が副業を持つことで、社内で得られない経験によるスキル向上などの効果が想定されていた。副業を持つことは本当に労働者にスキルアップの機会をもたらしたのか、その検証が残された課題だ。

 また、副業の促進に当たって、雇用主が複数になることで労働時間の管理がなおざりになり、長時間労働をもたらすのではないかとも懸念されていた。そのような副作用も同様に検証が必要だ。

 政府の副業促進は奏功した。今後は、副業のもたらした効果と副作用を評価し、エビデンスに基づく政策形成を着実に進めるべきだ。

(東京大学公共政策大学院 教授 川口大司)