激変!3大士業の仕事&稼ぎ方 弁護士 会計士 税理士#3Photo:PIXTA

過払い金バブルの終焉で、食うに困った弁護士事務所をさらに食い物にする経営コンサルティング会社が跋扈。広告宣伝費や事務員の給料など多額の経費を請求され、債務者の過払い金にまで手を付けた東京ミネルヴァ法律事務所が、ついに第一東京弁護士会から除名処分されるに至った。特集『激変!3大士業の仕事&稼ぎ方』(全12回)の#3では、その底知れぬ闇をつまびらかにする。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

過払い金25億円を不正に流用した
東京ミネルヴァが弁護士会から除名処分

 2月19日、4年前に経営破綻した弁護士法人の東京ミネルヴァ法律事務所が、第一東京弁護士会から“除名”という最も重い処分を受けた。過払い金の返還請求で、依頼者から預かった約30億円のうち約25億円を不正に流用していたためだ。

 多重債務者救済のためという大義名分によって、2006年に改正された貸金業法(本格施行は10年)から十数年の時を経て、弁護士事務所が多重債務者を食い物にしていた事実が明らかになった。

 東京ミネルヴァがなぜ、多重債務者を食い物にするに至ったかは後述するが、まずは過払い金バブルについて振り返っておこう。

弁護士会除名!東京ミネルヴァ法律事務所が債務者の金に手を付けた理由、「過払い金バブル」のあだ花Photo:PIXTA

 利息制限法と出資法の間にある、いわゆるグレーゾーン金利(年20~29.2%)を最高裁判所が実質的に否定したのが06年1月のこと。その後、過払い金返還請求は加速度的に増えていく。弁護士や司法書士がこぞって過払い金返還請求ビジネスに参入したためで、ピークとなった10年には5000億円を超える過払い金が返還されている。

 その後、緩やかに過払い金返還請求は減少していくものの、急増した過払い金の返還と上限金利の引き下げ、総量規制の導入により消費者金融は新規の貸し出しを抑制せざるを得ず、新規成約率は法改正前の約55%から20%台に低下。そのころ台頭してきたのが、金融庁が推進した銀行カードローンであり、この市場が膨張するに伴って新規成約率も50%弱にまで回復している。

 ところが、銀行のずさんな審査体制により再び多重債務者が増加し、17年には全国銀行協会が銀行カードローンの自粛に踏み切り、この市場は縮小に向かっていく。また、この頃には過払い金返還請求はピーク時の約3分の1にまで減り、現在ではピーク時の約10分の1にまで減少している。

 その一方で、過払い金返還請求で生計を立てていた弁護士や司法書士は食うに困る事態となった。そうした中で、東京ミネルヴァのように過払い金を不正流用したり、本特集の#8『「国が認めた借金減額」SNS広告で若年層を食い物に!経営コンサルと弁護士事務所の深い闇』で述べるような、債務整理ビジネスに手を染めたりする弁護士や司法書士が後を絶たない。

 さらに、それら弁護士や司法書士を巧みに操る経営コンサルティング会社や広告会社の存在も見逃せない。まさしく東京ミネルヴァの事案でも、同社を操っていた会社が存在する。次ページでは、東京ミネルヴァがなぜ債務者の過払い金を不正流用するに至ったのか。破産管財人の資料や取材を基にして背景に迫ろう。