宝塚歌劇団の劇団員が死亡した問題で、上級生によるいじめやパワハラを否定した調査報告書の内容が批判にさらされている。調査の発注者に都合が良い報告書は、実は上場企業でも量産されている。特集『激変!3大士業の仕事&稼ぎ方』(全12回)の#6で、“お手盛り委員会”を立ち上げた企業名と、“駄目報告書”が量産される理由を明かす。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
第三者委員会の報告書を評価する
格付け委員会が「不合格」とした企業名は?
「事実認定の正確性に疑義があり、深度と説得性にも欠けると言わざるを得ない」
日比谷パーク法律事務所の久保利英明弁護士がそう一刀両断するのは、中古車販売大手ビッグモーター(BM)の自動車保険金不正請求問題で、SOMPOホールディングス(HD)の社外調査委員会が作成した報告書である。
企業の不祥事について事実認定や原因分析などを行うのが調査委員会だとすれば、その調査委員会が作成した報告書を評価する組織がある。久保利弁護士らが中心になって2014年に立ち上げた「第三者委員会報告書格付け委員会」だ。
日本弁護士連合会が10年に策定した「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」の趣旨に準拠しているかといった視点で、委員の弁護士らがこれまで27の報告書を“格付け”した。A~Dの4段階で評価し、内容が著しく劣り、評価に値しない報告書はF(不合格)判定となる。
今年1月に公表されたSOMPOHDの調査報告書は、27番目の評価対象だ。冒頭の久保利弁護士だけでなく、委員8人中4人が不合格のF、4人がD評価を下し、C以上と評価した委員は一人もいないという駄目っぷりだ。
だが、そんな“駄目報告書”を作成したのはSOMPOHDの調査委員会だけではない。不祥事を起こした名だたる有名企業で、経営者に忖度したとしか思えない “お手盛り委員会”が乱立しているのだ。その実名と、駄目な報告書が量産される構図を次ページで明らかにする。