「実際の大幅賃上げは難しい」と中小企業
日銀がマイナス金利政策をいつ解除するか、その時期について「4月」との予想が多い。一方、3月19日の金融政策決定会合での進展を予想する声も増えている。3月上旬時点で、金融政策の先行き予想を反映する傾向が強い2年国債の流通利回りも0.20%程度まで上昇している。
日銀が注目しているのは、賃金の引き上げ幅が食料品価格などの上昇ペースと同じ水準あるいはそれを上回るか否かだ。その意味で、今年の春闘は重要だ。年初来、複数の日銀関係者が、「マイナス金利を解除する可能性は高まったが、その後も緩和的な金融環境を維持する」との見解を示したのは、賃上げ状況を確認する時間を見ているのだろう。
今年は、大幅な賃上げを表明する大手企業が増えている。23年末の時点で、小売り大手のイオンは、グループのパート約40万人の時給を平均約7%引き上げると表明した。初任給をメガバンク並みに引き上げる地銀もある。わが国の労働市場にとって、重要な変化だ。
一方、中小企業の事業環境は依然として厳しい。東京商工リサーチによると、24年度の企業規模別に見た賃上げ実施割合は中小企業84.9%、大企業の93.1%を下回る。新聞報道などで、「必要な人員確保に加え、専門人材獲得のため賃上げは必要だが、実際の大幅賃上げは難しい」という中小企業も多い。
帝国データバンクによると、23年に「人手不足」を理由とする倒産は前年比86%増の260件に達した。企業数で見ると、わが国の大半が中小企業だ。経営体力が相対的に弱い事業者の多くが、食料品などの価格上昇率を上回る賃上げを実現できるとは考えにくい。