史上初めて終値が4万円を超えた日経平均株価を示すモニター=4日午後、東京都中央区 史上初めて終値が4万円を超えた日経平均株価を示すモニター=3月4日午後、東京都中央区 Photo:JIJI

3月4日、日経平均株価の終値が史上初めて4万円を超えた。主に海外投資家の積極的な日本株買いによって、株価だけは“失われた30年”の出口にたどり着きつつある。問題は、わが国の実体経済を前に進められるか否かだ。さらなる株価上昇に必要な取り組みとは?(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

34年ぶり高値更新!4万円台突入の意味

 日経平均株価が連日、最高値を更新している。背景にはまず、世界的な金融市場の“カネ余り”がある。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げへの期待も、株価が上昇する支えになっている。わが国だけでなく、景気がかなり厳しいドイツなど欧州諸国の株価も上昇している。一方、不動産バブル崩壊で景気低迷が深刻な中国の株価は下落し、中国から逃避した投資資金がわが国やインド株に流れている。

 また、海外投資家の日本経済の見方が変化してもいる。高い賃金を提示し中途採用を増やす企業が増えるなど、日本の労働市場にも徐々に変化が見られ始めたからだ。東証が株価純資産倍率(PBR)1倍割れの企業に、成長戦略の提示と説明などを求めたことも、日本経済の変化への期待につながった。

 政府の産業政策の修正も追い風だ。今のところ、米欧以上にわが国の半導体関連の助成金支給スピードは速い。台湾の半導体ファウンドリーTSMCが熊本県に大型工場を開所したことを呼び水に、同県内では半導体および製造装置、関連部材メーカーなどが積極的に設備投資を実施している。自動車けん引型の日本の産業構造が変わると期待する、欧米の機関投資家は増えている。

 23年初旬から日本株を購入したある海外投資家は、「インフレ傾向の中、賃上げに対して企業が積極的な姿勢を強めていることや、産業政策の変化で日本経済と日本株は長期停滞から脱却する入り口に到達した」と指摘していた。

 米国経済の想定以上の成長も重要だ。米国では労働市場の需給がタイトに推移し、賃金上昇の勢いは強い。それは個人消費の増勢を支えている。生成AIの需要が急増したことで米国の半導体関連株が上昇していることも、日本株上昇にプラスに作用している。