<正解>
 1000円は消えていない

 ただ文章を読んでいるだけだと騙されてしまう、叙述トリックのような問題です。
 あらゆる事実を疑って、考えてみましょう。

問題文は本当に正しいのか?

 いっけんしただけでは気づきづらい数字上の「ごまかし」が存在します。
 問題文のラスト付近をもう一度ご覧ください。

 “3人は合計2万7000円を支払ったことになる。
 受付係がくすねた2000円を足すと2万9000円。
 残りの1000円はどこに消えたのだろうか?”

「3万円を支払った後で3000円返ってきたので、合計2万7000円を支払ったことになる」という計算は合っています。
 問題なのは、「受付係がくすねた2000円を足すと2万9000円」という一文。
 ここに注目です。

 3人が払った2万7000円は、「正規の宿泊料2万5000円」に「受付係がくすねた2000円」を足したものです。
 つまり「2万7000円に2000円を足すと2万9000円になる」のではなく、
「2万7000円から2000円を引くと2万5000円になる」
 
というのが正しい文章です。

お金の所有内訳を確認してみよう

 わかりづらいので、お金の所有内訳を時系列で見てみましょう。

   3人:-3万円
 受付係:5000円
 ホテル:2万5000円

 マイナスとプラスの金額は釣り合っています。
 その後、受付係が3000円を返すと……

   3人:-2万7000円
 受付係:2000円
 ホテル:2万5000円

 ここでもマイナスとプラスが釣り合っていて、何の問題もありません。
 3人が2万7000円を支払い、受付係とホテルが2万7000円を受け取っただけです。
 問題文では、この後に「受付係がくすねた2000円を足すと2万9000円」とありますが、その記述が混乱をもたらした原因であるとわかります。
 つまり1000円は消えたのではなく、

 消えたように書かれていただけなのです。

「思考」のまとめ

 それがさも当たり前のように書かれていると、つい信じてしまいます。
 だから、何事も「しっかり確認する」ことが大切です。
「数字をもちだして事実を煙に巻く言い方」は人を騙す際にも多用されるため、とくに注意したいですね。

・当たり前のように語られていることが正しいとは限らない
・あらゆる情報を検証して考える姿勢が大切

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター
論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者。ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1,500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。