既存店売上高の低迷にあえぐCVS業界。新浪剛史社長率いる業界2位のローソンは、新業態開発にまい進、既存店回復に向けて取り組んでいる。社長就任から5年、はたしてどのような成果が得られたのか。新浪ローソン改革を総括した。
「この5~6年、経済環境は本当に厳しくなった。売り上げは伸びず前年を下回る月も多い。他のオーナーも同じ状況だ。次のFC(フランチャイズ)契約更新はしないだろう」――。
関東近郊で20年以上、大手コンビニエンスストアを経営するオーナーはこう愚痴をこぼす。
現在、コンビニ業界は曲がり角を迎えている。大手各社は新規出店により増収を続けてきたが、既存店売上高は、2000年から7年連続で前年を下回っている(日本フランチャイズチェーン協会の大手11社集計)。2007年も8月まで一度も前年同月比を上回った月はない。
背景には人口減と少子高齢化が進み、コア顧客層の20~30代の男性が減少していることがある。加えて、ドラッグストア各社では安売り競争が続き、スーパーの営業時間は延長され、コンビニの競争優位性は崩されてきている。
既存店の大半はFC契約を結ぶ個人オーナー経営。このままの状態が続けば、冒頭のオーナーのように加盟契約を更新しなくなるケースが続出し、本部の収益が足元から崩れる。この状況を打破する方策を見出すことが、コンビニチェーンビジネスの経営者にとって現在最大の課題だ。
新浪剛史氏は、2002年5月、筆頭株主の三菱商事から転身しローソン社長に就任した。既存店売上高の前年割れはすでに常態化していたが、当時、新浪社長は「トップをいくセブン―イレブンを目標にすればいいと思っていた」と危機意識は薄かった。だが、それはすぐに間違いだと気づくことになる。
「本部の方針だから、とりあえず100個発注してくれ」――。
就任当初、現場回りをしていたとき、こうオーナーに迫る店舗指導員(SV)に新浪社長は愕然とした。その店がどのような立地にあり、どういう顧客が多いのか。店ごとに特徴があるはずだが、それをまったく無視した営業活動がはびこっていた。各店舗の売り上げ状況や顧客動向を見ずに本部の意向を優先する、本部の押し付け販売が組織全体に染み付いていた。「ローソンは売り上げ規模は2位かもしれないが、現場のレベルははるかに下位のチェーンだった」と新浪社長は振り返る。