アイデアで「自分の色を出せる人」の思考法
安達 『殻を破る思考法』で印象に残ったのが、「イノベーションがもたらすのは便益である」というシンプルな格言でした。
和佐 私は、石器時代から現在までにどんな破壊的イノベーションが登場したか、まるごと振り返ってみたことがあります。
安達 「石器時代」からですか(笑)。
和佐 そうです(笑)。獲物を倒すための石槍から、ライト兄弟の飛行機、そしてChatGPTまで、思いつくかぎりのイノベーションを時系列に並べました。
そのうえで、それらのイノベーションが「人類に何をもたらしたか=便益」を考えてみたところ全部で42個思いついたので、リスト化しました。
安達 これは、普遍的な「人間の本能」そのものを表していますね。
和佐 まさにその通りです。なので、これらの便益に自分たちの商品・サービスの特性をうまく掛け算できれば、思考が深化し、イノベーションにつなげることができます。
つまり、イノベーションはゼロから起こすものではなく、すでにある「点」と「点」の結合から生まれるんです。たとえば、この30年で一気に普及したインターネットに、百科事典を掛け合わせたのが「検索エンジン」です。また、インターネットにショッピングモールを掛け合わせると…
安達 「ECサイト」になるわけですね。
和佐 そうです。すべて掛け合わせの妙しだいなので、皆さんは「どの便益を掛け合わせれば、消費者を喜ばせられるか」を考える必要があります。それが「破壊的なイノベーション」であれば、新たな市場を作って、先行者利益をとることさえできるんです。
安達 すごい。この「42の便益」を押さえているかどうかで、他人の丸パクリしかできないか、自分の頭で新しいアイデアを生み出せるかが分かれますね。
和佐 そうなんです。これは売る側の論理ではなく、買う側の人間の根源的な欲求に軸足を置いた思考法なので、ぜひこの便益を意識しながらアイデア出しをしてみてほしいですね。
(本稿は、『メガヒットが連発する 殻を破る思考法』の著者・和佐高志氏へのインタビューをもとに構成しました)