「ヒット作を生み出したい」とは、ビジネスパーソンなら誰もが夢見ることだ。日本中の人がその商品の名前を知っている「メガヒット」ならなおさらよい。「綾鷹」「檸檬堂」「からだすこやか茶W」「SK-Ⅱ」「ファブリーズ」「ジョイ」…これらの商品は、ほとんどの日本人が知っているメガヒット商品だ。これらの商品を大ヒットに導いたのは、P&Gジャパン、日本コカ・コーラを渡り歩いた伝説のマーケター・和佐高志氏である。彼の初の著書『メガヒットが連発する 殻を破る思考法』(ダイヤモンド社)から一部を抜粋・編集して、ヒット作を生み出すコツを学ぶ。
結束した「チーム」こそが成功を掴み取る
「三人寄れば文殊(もんじゅ)の知恵」という言葉がありますが、チームのメンバーのコラボレーションは大きな力を生みます。コラボレーションには難しさもありますが、それだけに高いポテンシャルを秘めているのです。
それぞれのメンバーを尊敬し、それぞれの強みをいかに生かしていくか。これは、リーダーの重要な役割です。
そしてリーダーとして私が強く意識していたのは、任せることです。「そこまで任せるの?」というほどに任せる。そして、エンパワー、応援し、鼓舞する。
私はチームのメンバーよりも、マーケティングやビジネスに関して経験値が高いことが少なくありません。だから、「こうしろ、ああしろ」と指示を出してしまうと、その方向に進んでしまう。しかし、それではチームは成長しません。むしろ、考えなくなってしまう。
ビジネスのゴールを明確にし、期待値ははっきりさせますが、そこにどうやってたどり着くのかはチームに委ねます。私は困ったときにアドバイスをしたり、助け船を出したりはしますが、基本はすべてチームに委ねていました。
2020年、私は日本と韓国のコカ・コーラで150名近いマーケティング本部のメンバーを統括するCMO(最高マーケティング責任者)に任命されました。日本・韓国のコカ・コーラのすべてのブランドのマーケティング戦略を統括する大変重要なポジションです。このとき、私はこうメッセージしました。
「私のところに、テレビ広告の承認判断を持ってこないでほしい。カテゴリーのリーダーで決めてほしい」
戦略の指針は出しますが、後はチームを信じたかったから。そして、チームのパワーを信じたかったから。
そしてこのチームには、部下や社内のメンバーだけでなく、社外の人たちも含まれます。あらゆる分野のメンバーの力が結集されてこそ、不可能と思われる課題も解決することができるのです。
そうしたチーム意識、パートナー意識は、必ず結果を変えると私は考えています。
和佐高志(わさたかし)1990年、同志社大学文学部新聞学科卒業後、P&Gジャパン・マーケティング本部入社。医薬品、紙製品のマーケティングに始まり、化粧品&スキンケア、洗濯関連カテゴリー等を担当。ブランドと人材育成の実績を重ね、ブランドマネジャーからマーケティングディレクターへ。2006年、紙製品、化粧品&スキンケア事業部担当のジェネラルマネジャーとして、P&Lの責任を持つ。2009年より、日本コカ・コーラのお茶カテゴリーマーケティング責任者。「太陽のマテ茶」や「からだすこやか茶W」などの新製品発売および「綾鷹」ブランドの立て直しなどによるお茶カテゴリーV字回復を実現。2013年、同社副社長に就任し、「ジョージア ヨーロピアン」「世界は誰かの仕事でできている。」キャンペーンなど複数の大型ブランドのビジネス拡大推進をリード。2019年にコカ・コーラ社世界初となるアルコールブランド「檸檬堂」の開発責任者として成功を収め、最高マーケティング責任者に就任。2020年、日経クロストレンドが選出する、マーケター・オブ・ザ・イヤー大賞受賞。2023年、同社を退社。株式会社Jukebox Dreams(ジュークボックスドリームズ)を設立、同社代表取締役CEO就任。