リストラを迫られて知った、お金を通じた繋がりの脆さ

山口 次から次へとレストランやカフェをオープンさせて、凄まじい勢いでしたよね。

家入 どれも自己資金を注ぎ込んでいたので、お金がどんどん出ていって、かなりしんどくなっていきました。湘南にオープンさせた海の家が最後の一撃って感じでしたね。

山口 海の家って、どんな感じだったんですか?

家入 新江ノ島水族館の目の前というロケーションで、ふたつの物件を借りてクラブ風の造りに仕上げました。水着の女の子が踊っていたりする華やかな雰囲気にしたかったんです。ただ、スタッフに任せっきりで、結局のところ、僕はオープンしてからは1度も店に顔を出しませんでした。それがよくなかったんですね。スタッフからの報告もルーズだったし、収支がめちゃくちゃで、気づけば赤字になってました。

山口 その後はどうされたんですか?

家入 会社としてリストラに取り組まなきゃいけない状況になって、他の店も閉めましたし、スタッフの数も減らさざるをえなくなったんです。2001年から会社を経営してきたけど、初めて経験するリストラでした。

山口 苦渋の決断を迫られたわけですね。

家入 背に腹は代えられない状況でした。ただ、その体験もあって、「お金って何だろう?」と考えるようになりました。つくづく、お金を通じた繋がりは脆いと思いましたね。

山口 そのように痛感するような出来事があったんですか?

家入 当然といえば当然ですけど、リストラを告げると、スタッフは誰もが怒り出すんですよ。でも、僕にはピンとこなかった。僕は彼らに給与を払って、彼らはその分だけ働く、という対等な関係が成り立っていると思っていましたからね。現実には、彼らは僕の支払う給与を完全にアテにして、そのような生活がずっと続くと信じ込んでいたわけです。会社なんて、いつ倒産してもおかしくないのに……。結局、僕は彼らを雇うことによって、彼らを他人に依存するような人間にしていたということです。