経営再建中の半導体大手、ルネサスエレクトロニクスの社長に2月22日に就任した鶴丸哲哉氏が報道各社のインタビューに応じ、ルネサスの赤字体質について「環境の変化に迅速に対応できなかった」と振り返った。また、産業革新機構の出資以降の経営体制については「何も聞いていない」と述べた。サプライズ登板となった鶴丸氏に、今後のかじ取りを聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之)
――社長就任から1ヵ月。何を考え、どう行動してきたのか。
Photo by Hiroyuki Oya
ステークホルダーや顧客、大株主など色々な方にお会いした。産業革新機構とは連絡を密にし、13年度以降の計画を策定している状況だ。
従業員には私がどんな会社にしたいか、単純明快なメッセージを話している。「顧客に愛される会社にしたい」「従業員が明るく働ける会社にしたい」。この2つだ。そのためには、適正な利益とキャッシュが必要になる。
この実現に向けて、確実な売り上げと、効率的な費用の運営、そして研究開発や工場生産の回転率を上げ仕事を効率化することが必要だと従業員にメッセージを発信している。これはルネサスの中で議論が少なかったことで、私自身の反省も踏まえている。
――モバイル事業の方向性を見直し、海外メーカーと売却交渉していることを明らかにしたが。
個別の交渉相手名は差し控えるが、赤尾(泰)元社長のときから検討を続けてきた流れがある。ルネサスモバイルについて、方向性を検討していると公表する時期がきたと判断した。ルネサスモバイルの社長も、組織を簡素化して迅速に事業の方向性を打ち出すために、私の判断で(川崎郁也氏から茶木英明氏へ)交代させた。
――ルネサスモバイルはなぜうまくいかなかったのか。
着眼点はよかったが、携帯電話の移り変わりの激しさについていけなかった。モバイルの勢力図が急激に変わり、想定以上にわれわれが持っていた携帯電話ビジネスが小さくなっていった。急速に伸びていくスマートフォン向けの製品が出せなかった。