高成長&高年収!半導体160社図鑑#7Photo:Monty Rakusen/gettyimages

日本企業が圧倒的な世界シェアを押さえているのが、半導体素材だ。素材とその原料共にかなり寡占的なシェアを持っており、ライバルの追従を許さない。一方、各社は経営面ではリスクもあり、業界再編の予兆も見えてきた。特集『高成長&高年収! 半導体160社図鑑』の#7では、最強の日の丸素材企業の強みを分析しつつ、そのアキレス腱を探っていこう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

トップシェアメーカー2社が「国有化」!
最強素材業界に何が起こっているのか

 2023年は一見地味な半導体素材業界に、歴史的大事件が立て続けに起こった年として記録されるかもしれない。半導体フォトレジスト(シリコンウエハーに塗布し、露光を行うための感光剤)のトップシェア企業のJSRと、半導体のパッケージング(切り出した半導体チップを基板と接続すること)企業で大きなシェアを持つ新光電気工業が、「国有化」されることになったからだ。

 仕掛けたのは、官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)。JICは4月16日までの予定でJSRのTOB(株式公開買い付け)を実行中だ。負債を含めた買収総額は約1兆円にも上る。さらに、JICは大日本印刷、三井化学と共同で、総額約6850億円で富士通グループの新光電気工業を24年8月からTOBで買収する計画だ。

 JICの前身である産業革新機構は、かつて破綻寸前のルネサスエレクトロニクスに出資し、再建した経緯がある。だが今回の2件については、それと事情がかなり異なる。

 本特集#5『東エレク、レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!』で見てきた装置業界には、全体のシェア低下という課題があった。一方、素材業界には、今のところ事業上の弱みは見当たらない。それどころか、日本の素材メーカーの製品を使わなければどんな半導体を作ることも困難なほどの強さを維持している。

 にもかかわらず、国が合計約2兆円を費やし、この二つの素材企業の買収に動くのはなぜなのか。それを知るには、日本の半導体素材業界の成り立ちを詳しく見る必要がある。信越化学工業、JSR、味の素、イビデン、新光電気工業などの代表的な企業の動向や強み・弱みと共に、次ページから見ていこう。