残っている確率が高い「白いボール」と答える
「どっちを答えても確率は同じなのでは?」と思ってしまうような問題です。
ですが、確率というものは見た目以上にやっかいです。
たいてい直感を裏切ってきます。
そう、今回のように。
五分五分に見えるけれど……?
“箱の中に、ボールが1つ入っている。
ボールの色は、黒か白のどちらかである。
この箱の中に白いボールを1つ追加して、箱をよく振ってボールを1つ取り出したところ、白だった。”
……ということは、
「ならば箱の中のボールが白い確率は50%」
ふつうに考えると、そうなります。
ですが、答えは違います。
結論から言ってしまうと、箱の中にあるのは「白いボール」である確率の方が高いのです。
それも……
その確率は3分の2(約66%)です。
なぜ白いボールである確率がこんなに高いのでしょう?
論理的思考の極致「確率」
さて、本格的な解説に入る前に「確率」についておさらいしておきましょう。
それほど難しくはないので、「確率」と聞いた瞬間に拒否反応が出ている方も大丈夫!
ビジネスなどの日常(プレゼンとか稟議とか)でも使う機会は多いので、この機会に復習しておきましょう。
基本的に「何かが起こる確率」は、
で計算できます。
「場合の数ってなんだっけ?」という人は、「パターンの数」と読み換えてください。
サイコロを振って1の目が出る確率は「1÷6=1/6」みたいな話です。
さて、今回の問題に戻りましょう。
仮に箱の中に残っているのが「白いボール」である場合の確率を求めるなら、
=(最後に残っているボールが白であるパターンの数)÷(最後に残るボールの色のすべてのパターンの数)
で表されます。ここまでが前提です。
全体のパターンを確認してみる
では、問題文のシチュエーションから発生するパターンを洗い出してみます。
白を追加してそれを取り出したのだから、追加した白いボールは無視して、起こりうるパターンは、
・最後に残ったボールは黒
の2パターン……ではありません。
考慮すべき点があります。それは、取り出した白いボールが、
「最初から箱の中にあったもの」「追加したもの」のどちらだったのか。
これを考えないと、正しい確率に辿り着けません。
「追加した白いボール」を「白2」
として考えると、問題文のシチュエーションから発生するパターンは次のとおりです。
・最初から箱に入っていたボール=白1
・追加したボール=白2
・取り出したボール=白1
▶箱に残ったボール=白2
・最初から箱に入っていたボール=白1
・追加したボール=白2
・取り出したボール=白2
▶箱に残ったボール=白1
・最初から箱に入っていたボール=黒
・追加したボール=白2
・取り出したボール=白2
▶箱に残ったボール=黒
ありえるパターンは3通りです。
パターンAの場合、最後に箱に残っているのは「白2」です。
パターンBの場合、最後に箱に残っているのは「白1」です。
つまり、可能性は3パターンあり、うち2パターンで「最後に白いボールが残っている」という結果になります。
よって、白いボールが残っている確率は2/3(約66%)になるので、白いボールと答えるのが賢い選択です。
この問題をややこしくしているもの
わかりづらいかもしれませんので、補足します。
最初から箱に入っていたボールの色がどちらだったかは、白が50%、黒が50%。ここは動きません。
そこからボールを1つ追加したあとも、箱の中が「白1&白2」である確率は50%、「黒&白2」である確率は50%。ここも大丈夫です。
わかりにくいのは、次のステップ。
「箱の中からボールを1つ取り出したら白だった」という状況です。
箱の中のボールの色は2パターンしかありませんが、そこから白いボールを取り出すパターンは3つあるのです。
ボールの取り出し方における確率を出したいわけなので、必然的に「3パターンの取り出し方」を軸に考えないといけないのです。
「思考」のまとめ
確率は直感では理解しにくいため、なかなか難しいジャンルです。
ですが、事実を武器にできるため、論理的な説得材料としてビジネスで活用されるシーンは多く見受けられます。
ただし「なんか本当のことを言ってるっぽい」という納得度の高さゆえに、嘘やごまかしの手段としても成立します。
「集客成功率100%」のフタを開けてみたら、開催されたのは1回だけで、それがうまくいっただけだったり。
相手が吹聴している確率が「箱の中のボールの色」の話なのか「ボールの取り出し方」の話なのか、その違いには注意しておきたいところですね。
・「確率」は不確実な可能性を論理的に考える便利な手段
・結果と手段、どちらに目を向けるかで確率は変わるので注意
(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)
都内上場企業のWebマーケター
論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者。ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1,500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。