内臓脂肪が多くて高血圧の人が
まず行うべきは減量か、減塩か

 一般的に、内臓脂肪を減らすには「減量」が必要で、高血圧を改善するには「減塩」が必要といわれます。Bさんのような、内臓脂肪が多くて高血圧の人の場合、なかなか両方を徹底できないことが多いのが現実ではないかと思います。

 では、そのような場合、「減量」と「減塩」のどちらを優先して行うのがいいと思いますか?

 実は、血圧が高い場合は「塩分を減らす」のが必須なのですが、それだけで必ず血圧が下がるとは限りません。血圧が上がる原因は大きく3つあり、その原因によっては、減塩だけでは効果が得られにくいのです。ですから、まずは自分がどのタイプの高血圧かを見極めることが大切です。

 減塩で降圧の効果が上がりやすいのは、「循環血液量が増えるタイプ」の場合です。血管というホースの太さや長さは変わらないのに、流れる血液の量が多くなるとホースにかかる圧力が高くなります。

 そして血液の量が増える原因には「塩分のとり過ぎ」、そしてBさんのような「内臓脂肪の蓄積」があります。

 体は常に血液のナトリウム濃度を一定に保とうとしています。塩分をとり過ぎると、ナトリウム濃度を下げるためにほかの細胞から水分を引っ張ってきて血液の量を増やします。食塩を2gとると、血中のナトリウム濃度を元に戻すために約2Lの水分が必要になるといわれます。つまり、余分なナトリウムが排泄されるまでの間、血液量が増えるわけです。

 このように、血液の量が増えると心臓から強い圧力で血液を押し出さなければならなくなり、血圧が上がります。逆に摂取する塩分を減らせば、不要な水分は腎臓から排泄され、循環血液量が減って血圧が下がるわけです。

内臓脂肪から出るTNF-αは
インスリンの効き目を弱くする

 一方、内臓脂肪が増えると血圧が上がる背景の1つには「インスリン抵抗性」があります。

 太って大きくなった内臓脂肪は悪玉の生理活性物質を出します。そのうちの1つであるTNF-αは、血糖値を下げるインスリンの効き目を弱くする作用があります。これを「インスリン抵抗性が強くなる」といいます。