<正解>
「E」と「9」を裏返す

 またしてもカードの問題ですが、今回は確率の問題ではありません。
 どちらかというと、純粋な論理力が試されます。
 かなりシンプルな答えになりそうですが、ちょっとした発想の転換が必要になります。

直感で答えると……

「E」と「2」を裏返せばいいのでは?

 そう思った方が多いかもしれません。
 先に言ってしまうと、「E」は正解ですが「2」は間違いです。

「E」を裏返すことが正しいのは明白です。
「母音が書かれたカードの裏はかならず偶数である」というルールが成立するには、当然、母音である「E」の裏に偶数が書かれていなければいけません。
 なので、このカードを裏返すのは確定です。

 そして多くの人が「2を裏返して、そこに母音が書いてあればルールを証明できる」と考えます。

 ですが……残念ながら不正解です。

 ここで見落としがちなのが、「9」の存在。
 仮に「2」の裏に母音が書かれていたとしても、

「9」の裏にも母音が書かれていたら、ルールは成立しません。 

ルールの見落とし

「母音が書かれたカードの裏はかならず偶数」
 このルールが成立しているかどうかを確かめるのが本問の趣旨です。

 さて、ここからが重要なのですが、

「母音が書かれたカードの裏はかならず偶数である」

 というルール、これは「偶数が書かれたカードの裏もかならず母音である」という意味ではありません。

 たとえ偶数の裏が子音であっても、「母音が書かれたカードの裏はかならず偶数」というルールには違反しません。
 すなわち、

 偶数が書かれたカードの裏は母音でも子音でもかまわないのです。

確認すべき2枚目は「9」

 一方で、奇数が書かれたカードの裏はかならず子音でなければいけません。
 奇数のカードをめくって、そこに母音が書かれていたら、「母音が書かれたカードの裏はかならず偶数である」のルールが破綻するからです。
 よって、裏返して確認すべきなのは奇数である「9」です。

 以上より「E」と「9」を裏返すことで、この4枚のカードにおいてルールが成立しているかどうかを確かめられます。

「思考」のまとめ

 世界的に有名な認知心理学者ウェイソンが考案した「ウェイソンの4枚カード問題」がもとになった問題です。
 当時、正解率は10%未満だったことでも知られています。

 この問題、じつは過去に習ったことが役に立ちます。
 高校の数学で習った「対偶」を覚えているでしょうか。
「AならばBである」が成り立つとき、「BでないならばAではない」も成り立つという法則です。
 たとえば「人間ならば動物である」が成り立つとき、「動物でないならば人間ではない」も成り立つということです。
 この対偶の概念を、今回の問題に当てはめて考えてみましょう。

 命題:片面が母音ならば、その裏面は偶数である
 対偶:その裏面が偶数でないならば、片面は母音ではない

 こうしてみると、「偶数でないカードの裏を確かめる必要がある」と、わかりやすいですね。
 学生の頃、「こんな勉強が何の役に立つんだろう」と思った人は多いと思います。
 ただ、いっけんあまり役に立ちそうにない知識でも、思わぬかたちで役に立つものです。
 私たちが一生懸命努力して勉強してきたことは、将来にも何かしらの力になっていくはずです。

 ・「何が確認できればいいのか」だけでなく、「何が確認できなければいいのか」という視点で考えることも大事

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター
論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者。ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1,500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。