遅刻を「受付のせい」にした人の顛末とは……

 一方で、「残念な対応」で印象に残っているケースもあります。

 神対応に共通することの一つとして、「他責にしない」とお話ししました。残念だった対応は、まさに「他責にする」人でした。

 10分程度遅れて到着されたお客様。受付から担当者に連絡し、担当者がお迎えに来たタイミングでの一言に私たちは驚きました。

「受付にはちょうどくらいに着いていたのに、取次に時間がかかったみたいです」

 なんとそのお客様は、自分の遅刻を受付スタッフのせいにしたのです。

 もちろん、その場で「違います!」とは言えない私たち……。

 ただ、救いだったのは、その来客対応をした社員の方が、普段の受付スタッフの働きぶりをよく把握してくれていたことです。

 もしも私たち受付スタッフのせいでお客様をお待たせしてしまった場合は、内線での取次時に必ず「お客様は時間通りにいらしていたのですが、私たちの手違いでお待たせしてしまいました。申し訳ありません」とお伝えするように徹底していました。

 ですので、社員の方はそのお客様をお見送りした後に受付に来て、「さっきお客様が言われていたこと、本当?」と確認してくれました。そこで私たちは事実を伝えました。

 すると社員の方は、「初めてお会いする方だったけど、検討するのはやめるわ」と言って、席に戻っていかれました。

 どうやら、新しいサービス導入を検討する中でその会社に問い合わせをして、説明のために来訪してもらったとのことでした。

 10分の遅刻をどう伝えるか、どう対応するか――。私はこの出来事を経て、人間性が出る部分だなと感じましたし、ビジネスにおいて、「信頼できる人かどうか」はいろいろなシーンで見られていると思いました。

 ビジネスを進めるには、同じ会社の仲間や取引先、上司や部下といったさまざまなステークホルダーとの接点を持ちます。複雑かつ、利害関係もある相手を前に失敗してしまうこともあると思います。

 そういう時こそ、「言い訳しない」「他責にしない」、自ら「代替案を出す」というスタンスは非常に大切です。

 そして、もう一つ大切なこと。それは「繰り返さない」ことです。どんなに関係値がある相手でも、同じ失敗を繰り返すと、神対応は通じなくなり、担当者の対応は塩対応になっていくはずです。