円安加速も日本の「貿易赤字5.9兆円」、デジタル分野の競争力低下と資源高で“赤字体質”定着Photo:PIXTA

3年連続赤字、直近10年で黒字は3回だけ
貿易収支への為替効果は乏しい

 財務省が4月26日に発表した貿易統計(確報)によると、2023年度の貿易収支は▲5.9兆円だった。遡及可能な1976年度以降で最大の赤字額を計上した22年度(▲22.1兆円)からは大きく縮小したものの、3年連続の貿易赤字となった。

 近年は、貿易赤字の期間が圧倒的に長く、直近10年で黒字だったのはわずか3年間だ。81年度から07年度まで黒字が継続した日本の貿易収支は、なぜ「赤字体質」に変わったのか。

 輸出面と輸入面でそれぞれ1つずつ主因を挙げると、電気機械における国際競争力の顕著な低下と、資源高・原発停止によるエネルギー輸入の増加だ。

 いずれも構造的な側面が大きく、短期的かつ大幅な改善は見込みにくい。また、サービス収支でもいわゆる「デジタル赤字」が拡大している。財務省によると、デジタル関連のサービス収支は23年で▲5.4兆円となり、赤字額は前年から0.8兆円拡大した。貿易・サービス収支は今後も赤字基調が継続する可能性が高い。

 歴史的な円安の下、一部では輸出増などの「円安メリット」への期待も少なくないが、90年代以降の貿易収支の変化への寄与度を見ると、為替要因の直接的な収支改善の効果はわずかで、「赤字体質」脱却には収支構造の強靱化や、国際競争力の維持・強化に向けた取り組みが喫緊の課題だ。