ステークホルダーの目線を揃えることが
CEOの使命

――コロナ禍の期間を経て、貴社において変わったことはありますか。

 一見あまり良くない出来事でも、場合によっては、サステナビリティにとってプラスに効くことがあることに多くの人が気づきました。

 突然コロナ禍となって人々が発見したことは、必ずしも出張しなくても、リモートによるビデオ会議でも要件はある程度果たせるということがあります。人の移動が制限されたことで、それだけ二酸化炭素の排出量が少なくなるという事態となりました。

 私たち、ベイン・アンド・カンパニーは、サステナビリティのオペレーターとしての模範にならなくてはいけないと考えており、12年程前から、私たちはカーボンニュートラルを実現しています。

 そして、コロナ禍をきっかけにして、私たちは海外出張するときに、より一層効率化や二酸化炭素排出量を最低限にすることを考えるようになりました。例えば私はサンフランシスコ在住ですが、ロンドンで会合がある場合は、最初にリモートで済まないかと検討します。そのうえで、直接会う必要があると判断したら、次に、この機会を利用してロンドン近隣で他に会っておくべき人はいないかと考えます。もしいたら、欧州内の移動で列車利用が可能かを検討します。飛行機よりも二酸化炭素の排出が少ないからです。

――貴社のトップとして、そういう経営指導をしているのですか。

 サステナビリティへの対処において、私を含めてパートナー(経営幹部)は社員に模範を示したいと心掛けています。これは、会社全体の士気向上において大切なことなのです。

 当社にとって最も大切なステークホルダーは、社員とクライアントです。私たちは何か優れた製品を開発・生産して成長するメーカーではありません。会社の成功はすべて、クライアントに満足して頂ける提案を社員が提供できるかどうかにかかっています。それは優秀な社員が集い、モチベーション高く働いてくれることで実現します。

 この点において、今日、サステナビリティを重視する会社であることは、とても重要です。なぜなら、特に若い世代にとって、サステナブルな企業であることは、勤務先選びのキーポイントだからです。優秀な人材を採用したい、そして長く勤めてほしいと思うならば、サステナビリティを志向する会社であることが不可欠です。当社においては、この要件が当てはまります。

 私たちパートナーがサステナビリティを追求し、それに社員が共感し、そのことがクライアントの方々にも伝わり、クライアント、社員、パートナーという3つのステークホルダーの目線が合っている状況が当社にとって望ましい形です。

 ステークホルダーは多様で、その要望は分散化しています。したがって、CEOや経営幹部はそれぞれのステークホルダーをきちんと理解し、ステークホルダーの動機づけになるものは何かを把握していかなくてはいけません。今日のCEOに使命として求められるのは、ステークホルダーの目線をできるだけ合わせて、企業の目標を達成していくことです。(了)