プラスの感情を引き出す
「No.1ポーズ」

 言葉や表情、態度と同じように、動作は私たちの脳に大きな影響を与えます。

 No.1ポーズ(編集部注/塾高ナインの場合は、3本の指を立てるポーズ)はプラスの感情を引き出すポーズなので、ピンチの時に行うことで脳が肯定的な錯覚を起こし、行動意欲と行動力を高め、パフォーマンスを発揮しやすくしてくれるのです。

 No.1ポーズはどんなポーズでもよいのです。つまり最初はそのポーズには何の意味もついていないものです。そのNo.1ポーズを効果のあるポーズにするには、プラスの出来事があった時にNo.1ポーズを行う。どんなことでもかまいません。

 嬉しいことがあった。電車に間に合った。ごはんが美味しかった。好きな子から連絡があった。練習でいいプレーができた。監督に褒められた。どんなことでもいいので、プラスの出来事があったときに、そのポーズを行うようにするのです。1日に20回くらい。それをひと月くらい続けていると、No.1ポーズを取る=プラスの感情のときと、脳の中に条件付けすることができるのです。

 そこまでできたらしめたものです。ピンチの時、気が動転した時など、ここぞという場面でNo.1ポーズを行うのです。No.1ポーズには、事前にプラスイメージ、プラス感情、そして自分たちが掲げる目標や目的が脳の中に条件付けされているので、苦しい状況を楽しめる苦楽力を発揮することができます。

 塾高の生徒は日々の練習前に必ずNo.1ポーズを行いながら、目標「KEIO日本一」と目的「恩返し、常識を覆す」を唱和し続けました。その効果もあり、たとえどんなに苦しい場面に直面しても、No.1ポーズを行うことでその困難を苦しいとは思わず、まるで、楽しむかのようになりました。さらに目標と目的が想起されることでこの状況を克服しようという勇気が湧き、乗り越えることができたのです。こんなピンチでくじけていいのかと、いい意味で脳を錯覚させました。

 戦力だけ比べたら、決勝の仙台育英、広陵などのほうが上だと森林監督はおっしゃっていましたが、なぜ慶應が優勝できたかといえば、SBTで能力プラスアルファのものを手に入れることができたからだと私は信じています。