スーツを着る若いビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

ビジネスパーソンのファッションは、固定化されがちです。しかし、型にはまらない発想や行動をしていく人は、活躍の場とともに着ている洋服もどんどん変化していくと、私は実感しています。「クリエイティブになる」というのは難しく考えられがちですが、誰でも簡単に始められるいちばん手軽な方法が、外見を磨くことだと実感しています。連載『伝説のスタイリスト・近藤昌の「人生を変える装い」』の第10回では、知名度やスペック頼みではない、自分に合ったキャラクターのつくり方をご紹介します。(スタイリスト&ファッションディレクター 近藤 昌)

ファッションで新しい自分を発見する

 自家用車の点検に行ったときの話です。

 新入社員のときに接客をしてくれた男性が2年目を迎え、丁寧に説明をしてくれたのですが、短い期間での成長ぶりに驚きました。しかし、同時に気になったことがありました。私が出会ったころからファッションが何も変わっていなかったのです。むしろ、見る人が見ればわかってしまうスーツやネクタイのくたびれ具合でした。

「スーツとネクタイを新しくしたほうがいいよ。アメ横のスーツカンパニーならいいアウトレットのラインがあるから、店員さんに頼んで、今のシャツに合うラペル(下襟)のジャケットを選んでもらうといい。パンツの裾幅19cm、丈はダブルで折り返しを4.5cmにしてもらってワンクッション余らせる。スーツを変えたら、きっと成績はもっと上がるよ」とアドバイスしました。

 そんな話をしていると、私たちの目の前を一人の男性が通り過ぎました。シャツの襟幅とジャケットのラペルがマッチしていて、パンツもタックが入っている適度な太さです。ネクタイピンをちゃんとしていて、ネクタイにふんわりとした盛り上がりをつくっています。ネクタイ丈も長すぎないちょうどいい長さです。一目見て、身だしなみに気をつかっているとわかりました。

「あの男性は誰?」
「店長です」
「そうか、店長のスーツ姿は完璧だから、きみが服装を変えたら必ず評価される。このお店はグレーを着ているスタッフが多いし、紺色からそろえてみるといいよ」

 こんな会話をしてその場を後にしました。

 スキルが同じ営業マンでも服装が違うだけで、顧客からの印象は大きく変わります。洋服の知識があれば、相手の信頼を得るというゴールに大きく近づけるのです。