ハーバード大学の基金の運用を見てみると、年間リターンは33.6%(2021年6月期)あり、期末の基金の残高は532億ドル(※編集部注/1ドル154円換算で約8.2兆円)となっています。ハーバード大学は、トヨタなどを除いて、ほとんどの日本企業を余裕で買収できるだけの財務力を持っているのです。

 そして、大学の研究を支えるため基金から毎年20億ドル以上(約3000億円)がハーバード大学の運営経費として配分され、それは大学の年間収入全体の3分の1以上を占めています。学生全員を授業料タダにしても余裕で経営できる金額です。

 投資・運用実績は、標準的な株価指数であるS&P500をはるかに超えています。投資先はオルタナティブ資産が中心(約7割)であり、最大の投資先は未上場株式、つまりスタートアップ企業の株式となっています。

 これはハーバード大学だけではありません。ほとんどの有力大学は市場平均を超える高い投資リターンで基金を運用しており、そうした優れた運用パフォーマンスは主にスタートアップに投資することにより達成しているのです。

アメリカの理系大学院の
学生は給料をもらえる

 多くの人材が理系大学院で博士号を取りたいと思うようになるためには、博士課程が魅力的なキャリアを築ける場にする必要があります。すでにアメリカでは研究開発型スタートアップが基礎研究の一部を担うようになっており、資本市場との連結が可能とする莫大な研究開発資金の獲得のために、スタートアップの役割は日々拡大しています。

 そうしたテクノロジー主導型の会社、ディープテック研究開発型企業の創業者、経営陣、投資家には専門的なバックグラウンドが特に求められており、アメリカではPh.D.が専門的な資質の証明となっています。大学院進学により、自ら会社を興したり、スタートアップへ就職したりといったキャリアの選択肢の幅が広がることが、大学院の魅力の一つになっています。