孫正義氏と弘兼憲史氏Photo:JIJI(孫正義氏)/Photo by Motoyuki Ishibashi(弘兼憲史氏)

想像を絶するスピードとスケールで10兆円企業をつくりあげた経営者から学ぶべきことは多い。孫正義ソフトバンクグループ代表の評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談し、ビジネスパーソンに学びをお届けする連載「ビジネス教養としての孫正義」の第13回。対談相手は、ビジネス漫画の金字塔「島耕作」シリーズ作者の弘兼憲史氏。日本のビジネスシーンを長年にわたって見つめてきたその目に孫正義という経営者はどのように映るのか。共通の趣味であるゴルフやワインを通した交流を振り返ってもらった。(取材・構成/ライター 田之上 信)

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弘兼憲史が語る「伸びる人の条件」とは?

井上 今日の対談場所の「ワインと食の総合ビル」(六本木)は、オーナーが人気高級クラブ「クラブチックグループ」創業者の守川敏さんですね。守川さんの半生を描いた弘兼先生の『六本木騎士(ナイト)ストーリー』(幻冬舎)を拝読し、守川さんの「熱量」が孫社長と共通していると感じました。

弘兼 守川君は僕の中学・高校の後輩で、大学時代にアルバイトでキャバクラの黒服をやったことから、大学を中退してこの世界に入り込んだというユニークな経歴の持ち主です。反社会的勢力からの執拗な脅迫や暴行などにも屈せず、徹底的に戦ったんですよね。

井上 死ぬかもしれないという絶望の淵から立ち上がってこられた。孫さんも今でこそ大経営者と言われているけれど、絶望、絶望の連続なわけですよね。そこが守川さんと似ているなと。負けじ魂というのか、負けてたまるかという熱い思いがある。

弘兼 地獄を1回見た人間というのはすごく伸びますよね。守川君はとにかく努力家で、僕らと遊んでるときと仕事のときの顔がまったく違って、仕事になると非常に厳しい表情になる。それは孫さんも同じではないかと思うんです。

 そして、新しいことを常に考えている。たとえば、いま経営がうまくいってるからといって、このままでいいやって感じではなく、常に2の矢、3の矢を考えているタイプです。それは経営者としてすごいと思いますね。

井上 孫さんと共通していますね。弘兼さんが孫さんと最初に出会われたのはいつごろですか。