悪徳ブローカーの撲滅には
「規制強化」が不可欠だ

 言葉巧みにM&Aを勧めてくる悪徳ブローカーは、どうすれば淘汰されるのか。

 先述した橋場氏は「(案件を持ち込まれた企業が)他の売り手企業や買い手企業から話を聞き、仲介会社の評判を知ることがすごく大事だと思います」と指摘する。法規性の強化も重要であり、「免許制を導入するなど、業界全体での規制を厳しくしたほうが良いのではないでしょうか」(橋場氏)という。

 というのも、現行の法規制では、M&A仲介は免許制ではない。不動産業界では「宅地建物取引士」(宅建士)という国家資格が存在し、それを持たない者は重要事項の説明などができないが、M&A仲介は事実上「誰でもできてしまう」のだ。

 この課題を解消するためにも、橋場氏は「(M&A仲介業界でも)免許がないと説明できないくらいの重さにしてはどうでしょうか」と提言する。

 また、中小企業庁からの「お墨付き」にも疑問符が付く状況だ。現状では、中小企業庁が定めた基準を満たし、同庁に「M&A支援機関」として登録されている企業数は約3000社に上る。だが実際は「年間で1件もお手伝いできていない業者が登録されている可能性もあります」(橋場氏)という

 にもかかわらず、一度登録された仲介会社が、後から登録を解除された例は報じられていない。業界関係者も「聞いたことがないですね」と口をそろえる。実態が伴わなくても「お墨付き」をもらい続けられる状況なのだ。

 この点について、M&A仲介会社・NEWOLD CAPITALの代表取締役CEOを務める栗原弘行氏は「中小企業庁の方でそういうこと(登録機関の見直しなど)があれば、(業界の風紀が)もう少し引き締まるかもしれません」と説く。

 いくらビジネスニーズの高い業界だとはいえ、嘘の営業などが許される「無法地帯」であってはならない。悪徳ブローカーを排除し、業界全体の健全性を高めるには、規制の強化が必須だといえる。

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