一時のエネルギー株の苦戦を受け、弱気派は昨今の上昇が一時的なものにすぎないと悲観的な見方を示す。だが、米著名投資家のケン・フィッシャー氏は、むしろエネルギー株が2024年の株式相場の上昇を後押しすると見る。そんな、弱気派が驚くような新シナリオについて、同氏の見解を明らかにする。
エネルギー株の弱気派は
同じ過ちを繰り返している
日本を含む世界の株式相場が2024年は勢いよく始まり、私が昨年12月に予想した通り、良好~すてきな年(『24年の米国株、「目下の強気相場は終わらない」と米著名投資家ケン・フィッシャー氏が断言する理由』参照)に向けて、格好のスタートを切った。これは、弱気派を驚かせるだろう複数のサプライズの一つに過ぎない。
では、もう一つの驚きとは何だろうか。その新発見の事象とは、エネルギー株のけん引である。これは24年終盤まで、強力に続いていくだろう。理由は以下の通りだ。
まず、世界株式が3割以上高騰する一方、エネルギー株の上昇はわずか1割程度に過ぎないことが挙げられる。確かに、規模の小さな日本のエネルギー関連株は4割近く上昇し、日本株の約3割上昇に勝ったが――世界的には例外で、円安による為替換算後利益の誇張が主因と言える。つまり日本の動きは例外的であり、通例ではない。
22年のエネルギー株のアウトパフォーム――ロシアのプーチン大統領のウクライナ侵攻に伴う原油高に乗じた――を受け、大抵の人はOPECプラスの供給制限やコロナ禍後に再加速する中国発の世界的な供給不足を予想した。これが原油価格を再び急騰させ、エネルギー株上昇を後押しするだろう、というわけだ。
筆者は1年近く前の拙稿(『エネルギー株は要注意、「株高の燃料は枯渇しつつある」と米著名投資家が考える理由』参照)で、原油価格が22年3月の高値からいかに急落したかを示し、強気論に疑問を呈した。
何しろ、当時の原油のグローバル生産は供給不足懸念を打ち砕き、ノルウェー、ガイアナ、北米では増産基調のようだった。バイデン米大統領による連邦公有地リース一時禁止の影響は少なかった。米国の生産量は実際、過去最高を上回るほどだった。よって世界的に生産量は増加し、原油価格は1バレル=70~95ドルの範囲にとどまった――そして、利益が主に原油価格に応じて増減する世界のエネルギー企業は苦戦した。
しかし、エネルギー株の弱気派は今、過ちを繰り返しており、23年の遅れが24年も続くと推測している。以降では、エネルギー株の上昇が続く理由について、さらに深掘りの分析を行っていく。