腸こそ人間の本質か
脳と身体の不可分な関係

 脳科学に関する本を読む勉強会の様子を「いんすぴ!ゼミ」と呼んで、そういったことを毎週ライブ配信していますので、興味のある方は一度覗いてみてください。

 一体脳は何のためにあるのか、脳がなければ頭がいいことはありえないのか、というスタートラインに研究者になって改めて立つことになりました。

 私は、大学で生理学やバイオメカニクスを教えています。私の専門分野である神経生理学を中心に、いろいろな生理現象や筋肉、動く臓器、そもそも動物にとって運動するとはどういうことなのかについて、最新の研究も踏まえて解説しています。

 脳は確かに司令塔の役割を果たしていますが、当たり前ですが、まずは身体ありきで脳は身体の従属物と言った方がいいのかもしれないと、勉強すればするほど、思ってきました。例えば、腸はよく第二の脳と言われることがありますが、むしろ生物にとっては腸こそ本質であり、脳が第二の腸に過ぎないのかもしれません。

 これまでは、脳だけを研究すれば脳が理解できると思っていましたが、それは頭でっかちに過ぎないということも実感しました。つまり、本当に脳を理解したければ、脳と身体との連関を切り離して考えることなどできず、身体側の理解も重要なのです。

 最近では、私の研究室では腸も研究の対象としていますし、さらに興味の範囲を広げて身体を思い通りに動かすとはどういうことかについても、研究の対象としています。

 脳に興味があることには変わりありませんが、新しいことを学べば学ぶほど、疑問が更新されていきます。脳は本当に必要か、必要ないのでは?と極端に仮説を立てて、それを検証していく作業は実に楽しいものです。

脳細胞を集めても脳にはならない
脳が生きているとはどういうことか

 全てを徹底的に疑い、疑い抜いた末に、それを疑っている私という存在は疑いようがない、「我思う故に我あり」というデカルトが至った境地には敬意を表します。しかし、私という存在すら脳が作り出した解釈に過ぎないのかもしれません。まだ疑う余地があります。