米大学生が大量逮捕のデモの意味、アパルトヘイト反対闘争が手本【池上彰・増田ユリヤ】2024年4月25日、米国の首都ワシントンのジョージワシントン大学で、イスラエルのパレスチナ自治区ガザ攻撃に抗議する学生たち Photo:JIJI

イスラエルに融和的な
米国政府に抗議の声

増田 パレスチナの状況は悪化するばかりです。イスラエルはガザ地区最南部のラファへの攻撃を開始。5月26日には避難所も空爆を受けて、多くの死傷者を出しています。

 イスラエル側は「ハマスの拠点が対象であり、精密誘導が可能な弾薬を使ってハマスの幹部を殺害した」と主張していますが、到底認められるものではありません。国際司法裁判所(ICJ)はラファでの軍事作戦の即時停止をイスラエルに命じる暫定措置を出していますが、イスラエルは応じる姿勢を見せていません。

池上 国際刑事裁判所(ICC)は5月20日にイスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相、そしてハマス指導者のハニヤ氏、ガザ地区トップのシンワル氏、軍事部門トップのデイフ氏の逮捕状を請求したと発表しています。

 しかしこうした動きがあっても、イスラエルがガザ攻撃の手を緩める気配はありません。停戦交渉が進められているという報道もありますが、米国はラファへの攻撃を「本格攻撃ではない」と見なすなど、イスラエルに融和的な姿勢を取り続けています。

増田 こうした米国政府の姿勢に対する抗議の声は日増しに高まっています。特に米国の学生たちの行動は広がり続けており、大学側との摩擦も生じています。

 米コロンビア大学では300人以上、全米の大学では2000人以上の逮捕者が出ました。米ハーバード大学では5月23日に行われた卒業式で学生たちの大学側に対する抗議として数百名が途中退席し、そのうち十数名が卒業を認められなかったといいます。

池上 学生たちはなぜ、大学構内での抗議活動を継続しているのか。それは抗議の対象が政府やイスラエルではなく、大学そのものだからです。

 各大学は卒業生から膨大な寄付を得ており、こうして集まった基金を運用し奨学金などに充てていますが、投資先には米国の株式市場に上場しているイスラエル系の企業や、イスラエルに軍事支援している米国企業の株も含まれます。

 そのため、学生たちはこうした投資を行うことで、実質的にイスラエルを支援している大学に対して抗議しています。大学に対する抗議だからこそ、自らの通う大学の構内で行う必要があるのです。