北越コーポレーションと大王海運の対立は、2012年に北越が大王製紙株を買い取った時に始まった。北越の岸本晢夫社長、そして大王海運の実質的オーナーである井川俊高氏は昨夏、「12年戦争」の終戦もあり得た“講和会議”で直接対峙した。だが会議は破談に終わり、今年6月の株主総会で両者は激しくぶつかることになる。3回連載「激突!12年目の決戦」の下編で、対立の全貌を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 重石岳史、田中唯翔)
都内で開かれた幻の“講和会議”
北越と大王の実力者2人が直接対峙
2023年7月3日、東京都内の高級ホテル。製紙業界の実力者2人が、テーブル越しに対峙していた。
1人は売上高5位の北越コーポレーションで08年から社長に君臨する岸本晢夫氏。そしてもう1人は、同4位の大王製紙を創業した井川伊勢吉氏(1990年逝去)の三男、俊高氏だ。俊高氏は大王製紙で副社長などを歴任し、85年に関連海運会社の大王海運を起こした実質的オーナーである。
ある人物の仲介により、長年の因縁がある2人が対面する、初めての会食がこの日セッティングされた。
席上、岸本氏が言った。
「大王海運が保有する北越株を自社株として取得したい」
大王海運は13年から北越株を保有する。7月の会食時点の出資比率は約10%。岸本氏の提案は、この株式を時価約200億円で全て買い取ることを意味する。
このとき俊高氏が株式の譲渡に応じていれば、この日の会食は北越と大王の「12年戦争」を終わらせる“講和会議”となり得た。
だが、現実は違った。むしろこれを機に対立が激化し、今月27日に開かれる北越の株主総会で、2人が率いる企業同士が激突することになる。講和会議は、一転して宣戦布告の場となったのだ。
岸本氏はなぜ、北越株の買い取りを申し出たのか。そしてなぜ、和平はとん挫したのか――。それを理解するには、大王製紙創業家の「相克」と12年間の「戦史」をひもとかなければならない。次ページで明らかにする。